街頭演説集

第142回 小中学校教員不足問題

呉市立小中学校で教員不足が露呈、一時授業未実施校も!

Facebook 2018.6.9

 去る6月4日は、142回目の街頭演説。相棒が復帰しその第1戦となったため、祝意を込めて7名が応援に駆け付けました。テーマは小中学校教員不足問題についてです。

 先般、中国地方の小中学校で新年度早々教員不足問題が記事として掲載され、衆目の知るところとなりました。
 中でも呉市においては、吉浦中学校1年生の国語、2年生の理科において、4月は授業が実施できておりませんでした。それは教諭の確保ができなかったためです。
 他にも不足していたのは、昭和北、横路中学校では理科、昭和中学校では国語、両城、白岳中学校の理科、社会で、吉浦中学校と合わせ合計9名となります。但し、吉浦中学校以外は、教科免許を持つ教頭等他の教諭で何とか授業は実施しました。
 小学校でも呉市では3名が不足していました。小学校教諭免許は全教科を教えられるため、比較的対応が容易ですが、中学校では教科担任制ですから、そうはいきません。
 実際吉浦中学校の国語、理科では、他に同教科免許を持つ教諭が不在だったことから、4月の期間は非常勤講師を探し、その間は体育祭の練習や自習、家庭訪問に充てていました。つまり、他の学年を受け持つ国語、理科の1名ずつの教諭が教えると、非常勤講師が確保できた際、異なる指導を受けることで、生徒が混乱するという理由です。恐らくこの手法は今回初めてのことではなく、過去もあったけれども、一部の保護者による訴えで、初めて表面化したものと推察されます。

 それでは何故、新年度に入っても教諭が全て配置されない実態があるのでしょうか?それは一言で言えば教員不足の現実です。実際呉市立中学校では、昨年度末に25名が退職され、新規採用されたのは12名と、半分にも満たなかったのです。
 義務教育標準法では、学級編成を基準として、都道府県が配置教職員を人事します。ところが県全体の教職員が少ないと、基準に基づいた教諭を新年度当初から確保できないのです。そうなりますと、空いた穴を埋めるのは現場の各学校であって、教員免許所持者で、正規採用試験をパスできなかった待機組に声をかけ、臨時採用するのです。
 臨時採用とは、地方公務員法第22条に規定され、僅か半年間の有期契約であって、最長1年に延長することができます。呉市市長部局一般職の臨時職員とは違って、広島県費職員ですから期末手当は支給されます。
 しかし正直なところ、教育の質は落ちざるを得ません。以前は正規採用に係る受験資格には定年制がありましたが、現在は教員不足もあって、それが廃止されました。つまり、制限なく何度でも正規採用試験にチャレンジすることができるのです。
 そうなりますと、正規職員の穴を臨時職員、いわゆる臨採で埋めるため、今度は一時的な雇用を臨んでおられる待機組にしわ寄せが来ることになります。この待機組とは、既に定年退職になったり、他の仕事に従事していて兼業教員を望む者、結婚して教員を退くも、家事の合間に短時間の教職を望む者などがおられます。この方々を1年契約で短時間勤務雇用するのが、この度焦点が当てられた非常勤講師なのです。
 これは地方自治法や地方公務員法では、一般職と違って特別職地方公務員と位置付けられていて、いわゆる嘱託です。非常勤講師は中学校に多く、免許を持つ教科のみを担当することから、一度に複数校を受け持つこともあります。
 この待機組が、正規職員の穴埋めに臨採に取られることで少なくなり、各校長による取り合い競争になるのです。正規教職員の人事発令は、3月末ですから、それを受けて初めて穴埋めのための獲得競争が始動しますので、結果4月は教員不足となるのです。
 幸いにも吉浦中学校では、他の教科教諭が理科と国語において、学年を掛け持ちすることで、5月以降は授業を実施することになりました。しかし、出遅れた4月の授業単位を取り戻すためには、この夏休みや冬休みを活用せざるを得ない状況です。生徒にとっては長期休暇がそれだけ減りますので、運動クラブ活動や自然との触れ合い等、自主的で自由な活動が制約され、精神的にもストレスになりますから、決して好ましいことではありません。

 一方、この様な中にあって、以前民主党が政権を奪取した際、この義務教育標準法を改正して、小学校1年生のみは35人学級にしました。つまり、同一学年が36人になれば、2学級編成とする、いわゆる少人数学級への移行です。これを文科省は、法的根拠なきまま小学校2年生に拡大して予算を組んでおり、おかしな予算措置が継続中です。
 加えて広島県は、10数年前から小学校1・2年生においてははばたきプラン、中学校1年生においてははつらつプランを実施しています。即ち条件をクリアした学校に対し、1名の教諭を加配し、1学級を増やして少人数学級にしたり、教科を限定して習熟度別学級編成をするというものです。
 更に、福山市のように財政に余裕がある市では、県の加配以上に他の学年にも少人数学級や習熟度教育を実施し、単市財源で加配措置を採っているところもあるのです。
 こうなりますと、益々教員不足に陥り、それが他の各市町の小中学校における臨採、ひいては非常勤講師獲得が一層困難に陥ってしまうという訳です。
 昔は50人学級の時代があり、それでも授業が成り立っていました。しかし現代では、発達障害児が増えたり、いじめや不登校対応に追われたり、モンスターペアレントの増加等で、現場の教諭は授業が大変です。それがよりきめ細やかな授業を実施して教育効果を上げようと少人数学級へシフトさせようという流れが背景にあるのです。
 私は、学級人数はある程度確保する方が、多様な個性や能力を持った児童生徒のよき部分が他の児童生徒に好影響を及ぼすので、教育的な効果が上がると考えており、いたずらに少人数学級にすれば教育の実が上がるとう考えには賛成しかねます。
 教諭のなり手不足は、教職員給与特措法により時間外手当が認められないこと、学校週5日制になって以降、夏休み等も出勤しなければならなくなったこと等が原因であると推察しています。教職員の働き方改革にもメスを入れていかなければ、この問題は簡単には解決できないでしょう。

タイトルとURLをコピーしました