街頭演説集

第154回 災害土砂や瓦礫の撤去

国は、災害土砂や瓦礫撤去に係る補助事業の詳細設計を!

Facebook 2018.8.30

 去る8月27日は154回目の街頭演説。テーマは災害土砂や瓦礫の撤去についてです。

 この度の西日本豪雨では、土石流や床上浸水により民地やその家屋に土砂が流入したり、家屋自体が押し潰されて全壊したり半壊したり、それも多くの世帯に被害を及ぼしました。
 特に家屋が破壊されないで、土砂が流入した被災世帯に対しては、いち早く通常の生活に戻る必要から、ボランティアの力をお借りして、土砂の撤去作業をしています。一部は業者に発注して、土砂を撤去したところもあります。
 ここで多くの方からの疑問は、民地内の災害土砂や破壊された家屋の瓦礫撤去を、公共事業でやってくれないのか、ということでした。
 先ず原則として、民地内の流入土砂や堆積土砂は、自己負担で撤去することになっています。しかし、それでは費用負担がのしかかり、生活再建に多大な悪影響を及ぼすことが容易に推察されます。
 そこで、民地内の堆積土砂を排除するのを市が公共事業として実施するために、国道交通省の半額補助制度である都市災害堆積土砂排除事業というのがあります。これに適用されれば、被災世帯の自己負担はありません。但し、同一地域内において3万立米以上の堆積土砂が条件となっており、これに合致するのは、呉市内では天応地区だけでした。そこで呉市はいち早く、去る7月26日から天応地区住民に回覧通知を行い、公共事業への相談を受け付けたのです。
 ということは、天応以外の民地堆積土砂は対象になりませんので、大きな不公平が生じることになりました。この時、市民の付託を受けた議会への説明は皆無でした。同日いち早くこの点を私が指摘し、去る8月13日の議会協議会での同僚議員の質疑により、当局が初めて公式の場で、その否を認めたのです。

 結局、天応地区以外の民地内堆積土砂の撤去は公共事業でできないのか、という大きな課題が残りました。
 その一方で広島市では、4年前の集中豪雨災害の時適用した、環境相の半額補助である、災害等廃棄物処理事業を活用して、同一地域内3万立米以上の条件を満たしていなくとも、市が公共事業で民地内の堆積土砂を撤去すると発表しました。その後東広島市が後に続きましたが、当時は、環境省でこの制度の適否が定まっていなかったため、呉市を初めとする他の自治体は発表を控えており、県を通じて条件を環境省に確認していたのです。そうなりますと、同じ広域災害を受けた市町で、公共事業の有無が異なることになり、大きな不公平を生むことなります。
 因みに本事業は、災害等によって家屋が破壊された際に生じる災害廃棄物たる瓦礫を撤去するのを地方自治体が公共事業で行う際に、国が補助するという制度です。土石流によって土砂が民地内に滞積しただけでは対象外です。瓦礫の定義は、あくまで人工物が破壊された残骸ということであって、土石や流木等、自然物は対象外だからです。つまり、土石流により家屋が倒壊した際の瓦礫と、それに混じっている土砂が対象となります。しかも、家屋内に残留している瓦礫や土砂は対象外ですので、これはボランティアや家族で家屋外の庭先に予め搬出しておく必要があるのです。この時の家屋の状況は全壊のみが対象で、更に空き家は対象外でした。これをこの度特例として環境省が、半壊以上に補助対象を拡げ、空き家も対象に加えたのです。
 加えて、一見堆積物が土砂や石、流木だけであっても、そこに僅かでも瓦礫が混じっていれば、これを土砂混じりの瓦礫とみなす拡大解釈を行うことと致しました。幸い環境省の同事業に係る要綱には、土砂混じり瓦礫の定義として、瓦礫に含まれる土砂混入率が定められていなかったことが幸いしました。
 また本事業には、この度の暫定要件で、半壊以上の瓦礫が撤去対象になっているように見えますが、その実、もう一つの枠組みがあって、近隣家屋の瓦礫が、自身の所有地に流れ込み堆積した場合も対象となります。その場合、自身の家屋が空き家であろうが、一切破壊されていなくとも大丈夫です。この様な説明は呉市ホームページには記載されていませんので、市民にとって誤解を招く要因となっています。
 しかも呉市は、土砂混じり瓦礫撤去に係る相談窓口を去る8月2日から設置しましたが、その時のホームページ説明では、全壊家屋が対象として明記しておりました。ところがその翌日に環境大臣が、半壊以上と空き家にまで対象範囲を拡大すると発表し、国の制度が固まっていなかったことで右往左往し、市民にとっては非常に解り辛くなっているのです。
 このような事情から、他市と違って呉市では、電話相談窓口と致しました。では面談による相談はできないのか言いますと、決してそうではなく可能ではありますが、呉市としては、先ず電話で内容を確認し、その後現場確認をするという算段だったのです。
 また、環境省と国土交通省の補助事業における補助要件が異なっていたことから、国土交通省が歩み寄り、環境省のこの度の暫定要件に合わせました。具体的には、空き家も対象とすることと、既に民間事業者に委託して自己負担していた家庭に対し、事後精算を可能にするということです。

 一方、環境省の補助事業で呉市はどの程度の予算を組んだのでしょうか?この度発表された災害復旧に係る補正予算の専決処分では、一般会計予算総額320億円の内、総事業費が127億円も占めているのです。
 具体的には、工事費が88億円、その内の45%に当たる諸経費が39億円ですが、この中の1/3、13億円が補助対象になったのです。ということは、補助対象額は101億円となります。この内の半額である51億円が国庫補助、残りを呉市が災害対策債を発行し、その内95%が後年度に亘って普通交付税措置される特例を環境省が認めました。ということは、諸経費の残り2/3である26億円に、交付税措置の対象外である5%、即ち2億円を加えた28億円が、呉市の一般財源ということになります。
 この28億円の呉市負担を更に和らげるためには、環境省が諸経費の補助対象枠参入を更に拡大することを認める必要があります。これを去る8月22日、呉市長として環境大臣に要望書を提出したところです。
 尚本事業の制度は、激甚災害指定を受けた国の負担以上の負担を国が請け負うこととなりますが、この制度内容を恒久化するよう各県からの要望があります。ただこれに対しては、現段階で環境省は、あくまでその時々の災害規模に応じて判断するという考え方を崩しておりません。制度を恒久化すれば、国費の負担が増大し、財務省も黙っていないからです。
 この様に制度の概要が流動的であると、民間の土砂・瓦礫撤去に係る公共事業がそれだけ遅れ、その結果、生活再建が困難になる訳です。私は災害救助法や激甚災害の指定を受けた場合は、どの様な制度内容を適用するとか、最初から災害規模に応じての補助システムを確立をしておくことが国の責務であると考えています。同時に、国交省と環境省の似たような事業を統合して、予め制度の一本化を図っておくことも重要と考えており、縦割行政の弊害が、この度の生活再建の遅れに繋がっていることを、国は肝に銘じておくべきでしょう。

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