街頭演説集

第156回 公共施設からの指定管理契約撤退

休暇村サービスが公共施設運営から次々撤退へ!

Facebook 2018.9.13

 去る9月10日は、156回目の街頭演説。テーマは、公共施設からの指定管理契約撤退についてです。

 西日本豪雨災害を受けて赤字が増額となり、経営が困難になったとして、公共施設の管理運営を担う指定管理者・㈱休暇村サービスが今年度10月末を以て撤退することが、去る9月1日に判りました。
 撤退する施設は、島根県吉賀町が所有する温浴宿泊施設「むいかいち温泉ゆ・ら・ら」と、江田島市が所有する温浴休憩施設「シーサイド温泉のうみ」と温浴宿泊施設「サンビーチおきみ」です。
 指定管理とは、公共施設を民間事業者に管理委託する制度で、使用料制と利用料金制とがあります。
 前者は利用者が納付したお金が公共団体の歳入になるもので、赤字は市が負担しますので、指定管理者にとってリスクはほぼありません。対して後者の場合は、指定管理者に利用者料金が収入となる仕組みで、計画段階から赤字が予想される場合は、その穴埋めを公共団体が指定管理料を支払う形で補填を行います。逆に儲かり過ぎる人気施設の場合だと、指定管理者が収益の一部を市に指定管理者負担金として納付します。
 ということは、計画通り行って収支がとんとん、収入が計画を上回れば、指定管理者のインセンティブとなります。しかし、収入が計画を下回れば、指定管理者がその赤字分を処理する必要があり、大きなリスクを抱えることとなります。
 この度の2市町は、共に契約期間が今年度末までで、双方とも同時期に撤退することを休暇村サービスが表明したことになります。
 但し、ゆ・ら・らの場合は、以前から赤字が続き、累積損失が昨年度末で3,200万円にも上っていました。これに輪をかけたのがこの度の西日本豪雨災害による影響です。書き入れ時となる8月の宿泊予約が、前年度に比べ3割以上落ち込みました。これが決定打となって、同町との協議で11月1日からの休館が決定しました。
 これに対し江田島市の場合、休暇村サービスによる突然の撤退表明があり、寝耳に水の状況でした。恐らく同社として、吉賀町との協議がまとまり、撤退確定の既定路線を作った上で、江田島市に通告したものと推察されます。江田島市は、この度の断水による休館に係る赤字補填を含め、すぐに慰留交渉に臨みましたが、現在状況は変わっておりません。

 一方この問題は、我が呉市にとって、決して対岸の火事ではありません。何故なら、本市が所有する温浴宿泊施設「グリーンピアせとうち」を休暇村サービスに対し指定管理指定しているからです。
 しかも、指定管理者指定を解除した㈱ゆうとぴあセトウチの後を受けて、昨年9月1日から今年8月末まで、暫定1年間の指定管理契約となっていました。今年3月末までの経営状況は赤字でしたが、5月の連休やプール利用のある7~8月で追い込むことで、通年で収支とんとんの計画を立てていたのでした。
 ところが、この度の西日本豪雨で施設が被災し、1週間の休館を余儀なくされました。参入路のメインである国道185号線が寸断され、途中からは片側交互通行となり、渋滞続きもあって、宿泊予約のキャンセルや来場者の激減のあおりを受け、1年間の収支は大幅な赤字が出たものと容易に推察されます。不幸中の幸いは断水にならなかったことです。
 ところで呉市は、私が提案した同施設の公募売却を進める準備期間が足らないとして、去る6月定例会で、第2期指定管理指定を提案し、議決を得ていたのでした。即ち、この9月1日から再来年平成32年3月末までの1年7ヶ月の期間です。
 ということは、最初の9月から翌年3月末までは書き入れ時のゴールデンウィークと夏場が入りませんので、計画では756万円の赤字としています。それを最後の1年間で756万円の黒字を出して、トータルで収支を均衡させる計画なのです。
 第1期暫定指定期間が大幅な赤字、更に第2期暫定指定管理期間においても、災害直後の風評被害も手伝って、経営困難が予想される中、私としてはグリーンピアせとうちにおいても、指定管理撤退が飛び火するのではないかと危惧している訳です。
 呉市としては、休暇村サービスから相談があって初めて、協議に応じる構えで、自ら動くことは不利とみているようです。因みに、この協議事項は基本協定に盛り込まれています。
 いずれにしても、不可抗力である自然災害がどの程度収入に悪影響を及ぼしたかの根拠を、協議で確定させ、その穴を埋めるための補正予算計上は避けて通れないものと考えています。グリーンピアせとうちにおいて、休暇村サービスに途中で撤退されてしまっては、その後に控える公募売却の道のりが遠のく結果になるため、呉市としては何としても同社には踏み止まってもらわねばなりません。それなりの誠意を示す必要があります。

 さて、呉市との指定管理に係る基本協定には、通常の請負契約とは違って、指定管理者の事情で期間を全うしなかった場合の違約金条項はありません。これは全国共通のようですが、これでは、この度のように指定管理撤退がドミノ化する恐れを多分に含んでいる訳です。
 私は、法人税法施行令上は、指定管理は請負契約の一形態と位置付けているため、工事や業務の請負契約と変わらないと考えます。ならば何故違約金条項がないのか、不思議なくらいです。この考え方について、呉市としてきちっと整理するよう、課題を投げかけました。
 また、指定管理制度において、一旦請け負った会社が、次の指定管理期間の公募において、ほぼ必ず応募します。その間にノウハウを蓄積するため、提案において有利となるからにほかなりません。この様な事情から2回目からは他者が参入して来ず、独占状態になり易い問題点があります。
 だからと言って、使用料制度にして、歳入を市に納付する方法であれば、指定管理者としての経営努力が水泡に帰すため、経営意欲向上に繋がりません。平成15年の地方自治法改正により導入された指定管理制度ですが、大きな曲がり角に直面していると言えましょう。

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