呉駅前周辺総合開発は、足下を無視した机上の空論!!
Facebook 2018.11.19
先ず呉駅前の方向性に関し、前市長と現市長とのスタンスの違いについて、申し述べます。
前市長は、JR呉駅前の再整備を行政主導でJRと協力して行い、そごう跡地は、呉市を含む民間権利者による総合開発を訴えておられました。つまり、そごう再々開発はあくまで民間主導、駅前再整備は行政主導で、両者を明確に区分していました。私の予算総体質問に対しての答弁がそうです。
ところが現市長は、選挙戦マニフェストで前市長との違いを明確にするため、駅前に絞らず、堺川から二河川までの駅周辺を一体的に総合開発すると主張しておられました。つまり、そごうを巻き込んで、行政主導でもっと広範囲で開発するという手法です。
そこで現市長は、諮問機関である呉駅前周辺地域総合開発に関する懇談会を起ち上げました。同懇談会は、5月2日の第1回会議の議論を踏まえ、去る10月26日の第2回会議で、その方向性のビジョンとイメージ図を示しました。
因みに懇談会のメンバーには、東京大学大学院教授、広島大学大学院准教授、都市再生機構理事、道路新産業開発機構理事と、4名の有識者で構成。いずれもその道の専門家です。
その提示された方向性案の内、特に大型開発色の濃いものを紹介致します。
先ず駅舎を橋上化し、これまで直接降りられなかった駅南にも出られるようにします。改札口を線路の真上に移動させ、そこから双方に出られる仕組みです。駅舎はJR敷地に立地する、スポーツ用具店の「ヒマラヤ」を取り込む形で建て替えます。駅北口に出ますと、国道までデッキで連結し、デッキ下の広場空間を広く確保します。
広場面積を現在より拡大するため、そごう敷地の一部を取り込み、残りのそごう敷地と、隣接するJA会館とセットで再々開発を行います。その建て替えたビルには、商業施設を誘致すると共に公共施設を整備し、上層部はマンションにする構想です。公共施設の余剰が多い中、新庁舎整備もあって、新たに公共施設を整備するとは正気の沙汰ではありません。
更には、公共施設たる呉駅西駐車場を建て替え、低層部にバスプールと駐輪場、上層部を駐車場として再整備します。
そして、駅裏である駅南地区を再整備するというのです。と申しますのも、呉市有地を20年間定期借地しているシティホールや寿司店が建つ1街区は平成33年、レクレビルが建つ3街区は平成37年に契約期限が切れるため、更地返還となります。そこで、3街区を駅南土地区画整理事業の計画当初から構想のあったバスターミナルにするとし、1街区は今後検討するとしました。折角賑わっている駅南のレクレ撤退後、商業施設にはしないというから驚きです。
加えて、バスの発着拠点として、大型バスを広域長距離移動、中型バスを市内走行型の中距離移動、小型バスを市内循環と位置付け、小型のモビリティーサービスとしては、大和ミュージアムから呉駅南ターミナルを経由し、そこから橋上駅を通って駅前表玄関に出られる構想も描いていました。
但しこれらの案は、有識者の好き勝手な提案を受けて書いた絵に過ぎません。JRやJA、そごう・西武、シティホール、レクレ等には、寝耳に水な訳です。しかも、バスを充実すれば赤字が増えることは目に見えており、広島電鉄に対し、今以上の経営支援補助金を投下せざるを得なくなります。
そごう単独での再々開発でさえ、1権利者の法的手続きが進まないまま、早1年4ヶ月が経過してしまっているのです。広島駅前は再開発を成功させはしましたが、組合設立から完成実現まで、Aブロックで17年、B・Cブロックで35年もかかっているのです。更に広島駅ビルも大規模改修を行って、新幹線との連絡口を商業施設直結に造り直しましたが、利用者の規模が違い過ぎます。
私は、これらに係る調査費における呉市議会での予算審議から、この手法に真っ向から異を唱えて来ました。
その理由は、
- 呉駅前を全体的に総合開発する考えそのものがナンセンスであって、JRや民間地権者と相手があることなので、呉市一人が踊ってもどうにもならない
- JRは過去の駅前整備で一銭もお金を投じた実績がないことから、大幅な税金を投じることになる
- 駅舎や駅南までの自由通路は耐用年数を大幅に残しており、税金の二重投資になる
- ハコ物を整備すると、維持管理費が大きな負担となる
ということです。
また、その道の専門家に議論させれば、呉市の財政が厳しいこと、ハコ物に余剰が生じていること等は全く無視した形で意見が出ることは目に見えています。呉市は今後5年間で100億円の収入不足となる試算が既に財務部より出されており、今年度一般会計当初予算では、既に貯金に当たる財政調整基金を15億円も取り崩しています。
ましてや、この度の西日本豪雨災害の復旧補正予算は320億円と、年間予算の1/3を必要とし、そのため財政調整基金を更に56億円追加で取り崩しました。その結果、昨年度の余剰金の半分を新たに5億円積んだものの、76億円あった基金が、今年度末には僅か10億円しか残らない計算です。しかも、ハコ物は呉市公共施設等総合管理計画において、平成52年度までに総床面積を3割縮減する大目標を掲げており、これとも大きく矛盾して参ります。
これら呉市の財政事情やハコ物余剰状況は、東京等から来られた学者にはどうでもよいことかも知れません。とにかく市長の意向に沿った形で、将来像を描くのが彼らに与えられた使命だからです。勿論市長の意を汲む方が委員に選任されるのは当然です。
つまり、呉市の将来像を描くに当たっては、ハコ物整備中心とか大型開発を中心に据えるのは非常に危険なのです。前市長の時もJR呉線複線化をマニフェストに掲げ、2年簡に亘って調査費を2千万も組みましたが、それらは捨て銭となった苦い経験があることを忘れてはなりません。しかも、呉駅前地区整備計画策定費を前市長が1千万円組み、新市長が誕生したことで、中途半端な390万円の執行で止めたため、事実上どぶに捨てた経緯もあるのです。
橋下徹元大阪市長ではないですが、人口減少が激しく、高齢化率も日本一の呉市にとって、身の丈にあった必要最小限の整備に止め、ソフト事業中心にシフトするべきなのです。