街頭演説集

第173回 広島呉道路の4車線化

広島呉道路4車線化は有料化の再燃を招く!

Facebook 2019.1.11

 一方、指定管理者を非公募で決定するデメリットもない訳ではありません。広島企業局も先立って同社に指定管理を行わせて 去る1月7日は、173回目の街頭演説。テーマは、昨年末に急に降って湧いた広島呉道路「クレアライン」の4車線化についてです。

 この高速道路は、全国に繋がる通行料金プール制ではなく、ローカル線として単独採算方式を採用するもので、「一の路線」と呼ばれています。旧日本道路公団が建設したもので、政府系金融機関から資金を借り入れ、それで道路を建設しました。いわゆる財政投融資の活用です。債務返済は、通行車両の通行料金で賄うという手法で、30年償還で予想通行量から逆算して通行料金を設定する仕組みです。ローカル線ですから、全国網高速道路と比べ、債務返済を鑑み通行料金が高く設定されています。
 その償還期限である平成32年11月がいよいよ近づいて参りました。それが予定通り完済されれば、無料化されます。つまり後1年10ヶ月後には無料となる予定なのです。
 ところで、このような道路は4車線で都市計画決定しており、4車線分は土地買収を済ませてはいるものの、暫定2車線で供用開始していることが多いのです。東広島呉道や休山新道も暫定2車線供用です。
 但し、休山第1トンネルは供用開始後に渋滞が顕著なことから、早期に第2トンネルに着工し、来たる3月10日より開通する段取りとなっています。一旦暫定2車線で供用開始して様子を見てから、必要性が高まった段階で4車線化に踏み切るのが常なのです。またそうすることで、いち早く供用開始となりメリットもあり、地域経済に大きな効果をもたらします。

 ところが、昨年の西日本豪雨災害を初めとする自然災害による交通インフラの寸断を受け、国土交通省が国土強靱化を企図する安倍政権の方針に便乗し、暫定2車線の高速道路の一部を選定し、早期4車線化を目指すと発表しました。新年度に1兆円規模の追加財政投融資枠を財務省に要望したのです。
 それに便乗して呉市長は、千載一遇のチャンス到来として、広島呉道路の早期4車線化を国に要望しました。勿論、追加財政投融資枠にこの道路が対象になるかは、今後の動きに係って来ます。
 ここで疑問があります。国土交通省の考え方は、高速道路が4車線ある方が、災害で道路が崩れても、暫定道路をいち早く構築して通行止めが早く解除できるというものです。しかし、昨年の西日本豪雨では、坂町小屋浦の山腹が崩落し、その下にあった広島呉道路、JR呉線、国道31号線全てが被災して通行止めとなり、呉市が陸の孤島になりました。このような大規模災害であれば、例え広島呉道路が4車線化されていたとしても、結果はそう変わらなかったのではないかと、思えてなりません。
 また、もうすぐこの道路が無料化されれば、国道31号線はがら空き状態となるでしょう。もし通勤時間帯に広島呉道路が渋滞になれば、一部の車両は国道31号線に流れ、高速道路と一般道路に分散するものと推察されます。丁度、休山トンネルが渋滞の時には、一部車両が遠回りでも、旧国道(現在は市道)の呉越峠回りを選択するのとよく似ています。
 ということは、暫定2車線で無料化した後、十分な費用対効果を見極めた上で4車線化に踏み切る従来の手法が手堅いと言えましょう。

 一方、財政投融資で高速道路を建設するということは、供用開始後は有料になることを意味します。つまり、30年間での債務償還後の平成32年11月から一旦無料化されますが、ところが、残り2車線が今後着工となり完成した暁には、再び有料化となることは必定な訳です。4車線化と聞いて多くの市民は喜んでおられるようですが、再度有料化、しかもこれが新たに30年間も続くとなると、話は別です。地域経済にもその間悪影響を及ぼすでしょう。このことを理解しておられる市民はごく僅かです。
 先日東広島市長は、呉市長同様に東広島呉道の4車線化を国に要望されました。ところが、「有料化はあり得ない。最初から無料での供用開始を条件」と豪語されましたが、これは大変虫のいい話です。
 実は、東広島呉道も当初計画では、財政投融資で日本道路公団が建設し、有料化される予定だったのです。ところが、公団民営化に伴い、一旦公団が建設した高速道路は、新設された特殊法人・日本高速道路債務返済機構が所有し、これを公団民営化後の各地区高速道路会社にリースし、通行料金を原資としたリース料収入で、残りの債務償還に充てることになりました。広島呉道路はその手法で債務償還を行って来たのです。
 ところが、東広島呉道は広島呉道路に比べて採算性が大きく劣るため、財政投融資枠ではなく、国直轄事業に変更されたのでした。これは通行料金で債務償還をするのではなく、国民の血税で道路財源を賄うため無料となったのです。その代わり事業進捗が遅れ、当初計画から供用開始が大幅に遅れた訳です。
 だからと言って、東広島呉道を4車線化するのに、再度国直轄で行うことになる訳ではありません。国土交通省の1兆円枠は、あくまで国直轄事業ではなく財政投融資ですので、もし東広島呉道がそれに採択されれば、有料化になることは当然です。
 しかもこの道路は全線開通してまだ日が浅いですが、当初から無料にも関わらず、現在の2車線通行のままで、渋滞は殆どありません。
 ただ、朝夕の通勤ラッシュの時、呉市内に降りる国道185号線との先小倉交差点が混雑するだけです。それも現在立体交差化事業を進めており、後4年程度後には、完成する見込みとなっているのです。そうなれば、東広島から呉市内に車両で降り立ち、呉市街地へ向かう際は、185号線の平面道路に下りず、そのまま空中右折して、阿賀駅手前で降りることになるため、混雑が大きく緩和されるのです。ましてや、それに続く休山トンネルがこの3月に4車線供用開始されますので、ほぼスムースな流れになるでしょう。

 以上の理由から、広島呉道路「クレアライン」の早期4車線化ありきでの軽はずみな議論ではなく、あらゆる側面から検討した上で慎重に行うべきと考えます。

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