街頭演説集

第190回 広域緊急輸送道路沿道建築物の耐震改修

遅れた広域緊急輸送道路等沿道建築物の耐震改修助成

Facebook 2019.6.5

 去る5月27日は190回目の街頭演説。テーマは地震に備えた輸送路の確保策です。

 耐震改修促進法により、都道府県や市町村は地震等による緊急輸送路を確保するため、耐震改修促進計画の策定に基づき、指定路線の沿道建築物の耐震改修を促進する施策を打ち出しています。
 具体的には、市町村を跨がる広域的重要路線を広域緊急輸送道路に県が指定し、その沿道建築物の内、昭和56年の新耐震基準以前の建築物で条件に当てはまるものを法による通行障害既存不適格建築物として、耐震診断と診断結果報告を義務付けました。これは市が指定する避難路の沿道建築物についても同様です。
 因みに、広域緊急輸送道路は、国道31号線、広島呉道路、国道185号線、国道375号線、東広島呉道の5路線です。避難路は市道中央二河町線のみで、広島呉道路を下りてすぐの路線です。
 加えて建物の対象条件とは、全面道路幅員が12m超の場合は幅員の1/2以上、幅員が12m以下の場合は6mの高さを超えることとなります。
 そして、県指定の緊急輸送道路沿道建築物の場合の耐震診断は県が全額助成、市指定の避難路は、国と市が支出します。
 これらの場合、令和3年度までに、耐震診断の結果を道路指定した県若しくは呉市に対して、所有者は行うことが義務付けられました。

 では、耐震診断の結果、基準のIS値0.56(標準値0.6×呉市の地域指数0.9)を下回った場合どう対処するのかとの問題となります。
 実は県が平成28年度にこの制度をスタートさせた際、建物所有者が耐震改修、解体、除却を施した場合は2/3の公的補助制度を用意していたのです。その補助の財源内訳は、国が1/2、県と市が1/4ずつです。結局所有者自己負担は1/3。早期施工した場合は全体費用の1/10が公的助成の加算分となるのです。
 ところが、これは国の制度を活用した協調補助制度ですので、県が補助を用意したとしても、肝心の呉市がそれに乗らなければ、公的補助はゼロになります。当時呉市は、この制度に乗らず予算に計上しなかったため、折角耐震診断して結果が悪くても、それを改善するには、全額自己負担となるのでした。これでは木造住宅耐震改修促進制度同様、耐震診断(当初は自己負担ゼロ、現在は1万円)を行っても、肝心の耐震改修に繋がらないのと同様で、余り効果はありません。
 私は、「県が制度をスタートした平成28年度から予算計上するべきだった。このことに対する議会への説明が全くなかった」ことを、この度問題視致しました。市によると、国から補助金をもらうためには、その根拠として耐震改修促進計画を改定する必要があり、それが間に合わなかったというのです。しかも、「県の上位計画に合わせる必要があった」とも言い訳がありました。県もこの制度をスタートさせるには、平成28年度から同様の計画を改定することが必要だった訳です。ならば、いち早く呉市もそれに合わせて計画改定することはできたはずです。
 実際、呉市耐震改修促進計画は平成29年6月に改定し、その上で翌年度の30年度から県との協調補助である広域緊急輸送道路等沿道建築物耐震改修助成制度をスタートさせています。具体的に30年度予算は9,010万円で2件実施。31年度予算では、5件分4,760万円を計上致しました。
 ということは、耐震改修等への補助がない年度にそれを全額自己負担で実施した所有者と、お金がかかるからそれを見送った方は、後年度に公的助成を活用でき、大きな不公平が生じる可能性がありました。正に正直者が損をする構図です。
 しかし幸いにも、公的助成制度がない年度に、全額自己負担で施工した所有者は、この度調査させたところ、なかったようです。

 結果的に事なきを得たようですが、不公平が生じる危険性が大いにあり、議会への情報開示を怠った呉市の責務は問われるべきでしょう。行政は公平でなければなりません。大いに反省してもらいたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました