街頭演説集

第216回 農地の流動化規制撤廃

農地流動化規制撤廃による耕作放棄地復活で移住促進を!

Facebook 2019.12.17

 昨日は216回目の街頭演説。テーマは、遊休農地活用による移住促進策です。

 呉市は周辺8町との合併後、農地法改正を受け、平成21年12月に農地の売買や貸し借りに係る別段面積を改定しました。合併町でも農業振興地域は30a、旧市内の農業振興地域や倉橋町では20a、旧市内や下蒲刈、蒲刈、音戸、川尻各町は10aです。
 農地法では、北海道を除く全国の下限面積は50aとされていますが、地域事情によって、それを緩和し別段面積を設定することが認められています。
 一方、代々続いた農家でも、次世代が農業を継がず都会へ転出した結果、耕作放棄による遊休農家が増え続けています。その中には、農業委員会に無許可で農地を貸し出しているケースが多々見受けられ、いわゆる闇の貸し借りが横行しているのが実情です。
 農地法による下限面積規程は、農業規模の確保による安定経営や、競争相手増加による価格低落を防ぐため、いわゆる農家を保護する目的で創設されました。ところが今やこの規程は現実と大きく乖離しており、規制を大幅に緩和する必要があると考えています。

 私は農業委員会に対し、別段面積の縮小化の検討を要請していました。それを受け今年6月から呉市農業委員会は、農業委員や農地最適化推進委員による調査を進め、去る12月1日に別段面積改定の公示を行うに至りました。その具体的内容は、農地法施行規則第17条第1項第2号による最低面積10aで市内全域を統一したことです。
 加えて同条第2項2号による政策誘導での別枠設定です。具体的には、空き家バンクに付随する登録農地であれば、これを0.1aにする内容です。これは安芸太田町や秋田県仙北市の1aを更に下回っており、大きな進歩です。田舎暮らしでの自然教育や、無農薬栽培での自給自足、家庭菜園を望む子育て家庭等が都会からIターンすることを誘発する施策なのです。また呉市では、都会から移住した地域おこし協力隊員を嘱託雇用していますが、3年を経過した時点で嘱託契約が切れますので、それ以降定住するためには職を手にしなければなりません。その時別段面積による農地流動化規制が大きく壁となって立ちはだかっていたのです。
 但し空き家付随農地の別段面積設定も、仙北市と違い呉市の空き家バンク制度は、宅建業者との重複登録を禁じているため、極めて登録数が少ないのです。ましてやそれに付随する農地はごく僅かしかなく、折角の移住促進策が中途半端になってしまいます。
 去る12月12日の不肖一般質問で私は、移住促進策を更に前に進めるためには、この空き家バンク制度の二重登録禁止規定を取っ払うべきと、当局を糺しました。ただもしこの規制を撤廃したとしても、0.1aでは、それより小さい農地は貸し借りが不可となります。家庭菜園でもいいから田舎暮らしをしたい方に対して、まだまだハードルを下げる必要があると考えます。

 そこで私は、空き家バンク付随農地に限定せず、更に別段面積を下げる提案を致しました。北広島町方式です。
 これは、1a以上の圃場整備済み農地は、呉市同様、農地法による最低面積原則である10aですが、それ以外の農地、即ち1a未満の圃場整備済み農地や圃場未整備農地については、0.01aにまで別段面期を引き下げるものです。これは農地法施行規則第17条第2項「将来の見通しからみて」、そしてその第1号による「遊休農地等が相当程度存在する場合」を拡大解釈し設定したことが、この度の不肖による視察調査により判明しました。例外的な同項第2号ではなく、第1号を適用するとは、大きな発想転換です。
 しかも第2項には第1項と違って、最低限度面積が明示されていないのが注目すべき点です。0.01a、即ち1㎡は、農地法による農地の流動化規制を事実上撤廃したとも言え、画期的な現実路線なのです。これこそ、遊休農地縮小や闇の貸し借りの解消、そして、何よりも移住促進や無農薬栽培奨励策にも繋がって行く、現代ニーズに対応した優れた手段です。
 呉市当局は、これでは農地の小口分散化が進み、大規模農地集積が困難になると答弁しました。ところが北広島町では、相変わらず10aの別段面積対象農地は、全体の2/3もあります。大規模経営を目指す農業者には、十分門戸は開かれているのです。
 TPPが昨年暮れに発効されて以降、政府は大規模農業を支援する施策にシフトしていますが、我が呉市で大規模農場を更に拡大しようとしても、跡継ぎが都会に出て行ったまま帰って来ないことや兼業農家が多い現状を見るにつけ、当局の答弁は全く説得力がないと言えましょう。

 一方、農地利用集積促進事業補助制度との関係について考察して参ります。
 これは農地の貸し借りを促進するための単市補助となっており、平成20年度から24年度までは貸し手に対して、25年度から30年度までは、逆に借りてに対して支援して来ました。今年度からは貸し手・借り手双方に対し、10a当たり1万5千円を補助しています。この様に対象がころころ変遷して来たのは利用が進んでいないことを物語っています。本制度は、農業委員会の許可が前提となっており、どのみち闇の貸し借りが多い現状では、期待できません。
 そこで、農地法改正により農地中間管理機構へ1号遊休農地を貸し付けないと課税強化されるようになったこともあり、北広島町の様に農地流動規制を事実上撤廃してしまえば、この補助制度も不要になると考えます。つまり遊休農地の活用を含む新規就農を促すには、ニンジンをぶら下げるのではなく、制度の大幅な規制緩和にあるのです。
 実効性に乏しい補助制度に頼るのではなく、流動化規制を事実上撤廃すること。豊かな自然に恵まれた島嶼部を有する我が呉市において、農地取得と田舎暮らしの良さを積極的に宣伝することで、遊休農地縮小と移住促進に繋げていくべきと考えています。

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