街頭演説集

第232回 家庭系一般廃棄物の収集体制

家庭ごみ直営収集体制の裏に潜む既得権益を打破せよ!

Facebook 2020.4.16

 去る4月14日は232回目の街頭演説。テーマは、家庭系一般廃棄物の収集体制についてです。
 昨年秋の呉市議会決算委員会で、環境部長が唐突に家庭系一般廃棄物の収集体制の一部直営維持を表明しました。議会には寝耳に水です。
 呉市の場合、収集職員の退職者不補充施策を平成11年度より継続しており、不足する職員を補うため、順次民間委託を増やして来ました。その結果平成30年度までは、一部合併町を除く市内家庭ごみ処分量の3割が民間委託となっていました。このまま退職者不補充を継続していけば、最終的には完全民間委託化が実現するとみていたのです。

 では、何故民間委託化を進めて来たのでしょうか?呉市は平成24年度から令和3年度までの10ヶ年におけるアウトソーシング推進計画や、平成30年度から令和4年度までの第3次行政改革実施計画にも、この方向性を示しています。
 この最大理由は、市職員による直営収集と、民間事業者による委託収集とでは、大きな人件費格差があることです。具体的には、1トン当たりに係る家庭ごみ収集コストで比較しますと、委託の8千円に対し、直営では1万2千円と、1.5倍もの経費がかかっていることを、昨年の決算委員会で私が答弁を引き出しました。
 しかも、直営では朝収集に出発して、事務所に帰って来るのが早くで午後1時、遅くて3時です。委託では殆どが午後4時となっています。加えて、直営の場合は、勤務時間の余剰時間に入浴することができるようになっています。実際虹村にある事務所内には入浴施設があるといいますから驚きです。民間事業者職員は帰宅して風呂に入るのは、聴くまでもありません。
 以前呉市交通局を民営化した際も、民間バス運転手に比べ公務員運転手の人件費が4割高になっていたことや、保育所を民営化した際も、一施設で1千万円から1千5百万円の人件費が節約できるとの報告があったくらいです。
 更に収集する現業職にも、一般職と同じ人件費、いわゆる行政職俸給表1が採用されています。因みに国家公務員では、現業職に対し、より安価な行政職俸給表2を採用しています。交通局も行1でしたが、赤字続きで民営化議論が白熱した際、行2に近い給与体系に変更した経緯があるのです。

 そればかりではありません。彼らには特殊勤務手当の一つである清掃業務等職員手当が支給されています。それは給与とは別途日額650円です。以前は1,550円だったのを、私がそれをゼロにするべきと主張し、職員労働団体との妥協の結果、平成26年度より現在の手当になった経緯があります。
 当時、呉市と同じ特例市40市中19市が清掃手当は支給していなかったのです。支給している都市の支給額の平均値が645円だったことで、呉市が650円を決めた経緯があります。私は当時の議案質疑で、「支給額ゼロの都市を入れて平均値を出さないと意味がない。それは欺瞞である」と指摘。その結果、真の平均値は339円だったとの答弁まで引き出しています。
 ある自治体は、同じ一般職でも現業職は一般の公務員試験とは異なり、ごみを収集することを仕様書に謳った上で募集した経緯があるので、そもそも清掃手当はなじまないと国から指摘を受け、廃止したところもあるくらいです。
 勿論、民間事業者の職員に清掃手当はありません。これが現業職における官民格差の実態です。この背景には呉市職員団体の圧力があるのは明白です。
 本来、特殊勤務手当は条例で定めることにしており、職員労働団体に労働3権の内、1権の団結権しか付与されていないからです。つまり団体交渉権はありません。ところが、実際は特殊勤務手当支給条例に650円に改正する案が上程された段階では、既に労使協議が妥結した上でなのです。それを議会が否決や修正をするのは困難ですから、事実上の団体交渉と言われても仕方ありません。

 加えて、定年退職後の再任用です。事務系一般職員は60歳定年になった後、本人が希望すれば嘱託採用でした。当時の交通局もそうです。現在は厚生年金開始時までは高齢者雇用安定法の趣旨から再任用とし、年金支給年齢に達すれば65歳までは嘱託となっています。
 これが収集職員の場合は、当初から再任用、66歳から本人が望めばようやく嘱託採用になる仕組みとなっていました。正にこれらは既得権益と言えましょう。
 ここで再任用と嘱託採用の違いを申し述べます。再任用職員には通勤手当や期末・勤勉手当(ボーナス)が支給されますが、嘱託員にはそれがありませんでした。週29時間勤務はほぼ同様です。同一労働同一賃金からは程遠かったのです。
 「何故再任用か」と過去私が一般質問で追求しますと、「特殊な技能を有するから再任用である」と答弁をした経緯があります。勿論これは欺瞞です。何故なら交通局のバス運転手は大型第2種運転免許資格を有しています。それでも嘱託だったのです。消防吏員は消防の専門学校で学び、訓練を受けますのでこれは特殊技能ですから、定年直後からの再任用には理解できます。
 ところが、収集職員は有資格者でもありませんから、到底特殊技能者とは言えません。地方公務員法補則の特例第57条にも、「単純労務に雇用される者」が謳っているのです。この単純労務者にはごみ収集職員が含まれると私はみています。

 一方、民間委託化が遅々として進まないもう一つの要因があります。それがすこやかサポート事業です。これは身体の弱い独居老人等が自宅の玄関先にごみを出すことで、そこに直営職員がわざわざ収集に回る制度です。要綱では「要介護2以上」と記されていますが、実際はケアマネージャーや民生委員が窓口となり、要支援の方も享受していることを私はみて来ました。
 平成30年度は、これに係る職員が11名、令和元年度は8名でした。少子高齢化が進む中、これに係る職員数が今後増えていくことは自明の理です。
 何故、このようになし崩し的に利用者が増えるのかと申しますと、受益者負担が求められていないからです。ある自治体では、介護保険制度を使い、ヘルパーが最寄りのステーションまでごみ出ししているケースが見受けられます。これは当然かかる経費の1割自己負担となっています。
 ただであれば、ごみステーションまでの坂道がきついとかの窮状を訴えることで、利用者が増えるのは当然です。これでは本人の自助努力や地域の互助や連帯も育ちません。筋力も退化の一途で、介護度も進捗が早まるというものでしょう。応分の受益者負担を求めるべきです。先の3月定例会の予算総体質問で、私はこのことを糺しました。市の答弁は今後も本制度を継続するということでした。
 これでは、「不公平是正」を今年の職員宛メッセージでも強調した市長の方針と相容れないことになります。

 結局、新市長の指示で、退職者不補充施策を転換しようとしていると言われても仕方ないでしょう。私は災害ごみ収集においても、民間事業団体と災害協定を締結し、協力を求める体制を確立すれば十分対応できると主張しました。このことについては、「検討する」との答弁を引き出すことに成功した次第です。

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