街頭演説集

第234回 中学校デリバリー給食の実態

デリバリー給食を廃止し、小中共同調理場の建設を!

Facebook 2020.4.27

 昨日からゴールデンウィークに入ったようで、本日は234回目の街頭演説。テーマは中学校デリバリー給食の実態についてです。

 さて呉市は、合併町を除く旧市内の市立中学校においては、学校給食を導入しておりませんでした。過去の本会議での市教委答弁でも、中学校にデリバリー給食を実施すれば年額2億3千万円もかかるので、導入に前向きではありませんでした。平成25年度末に出された呉市中学校学校給食に係る答申では、現在老朽化している小学校の自校調理場を建て替える際に、小中共同調理場を市内に2箇所建設した場合、50年推計ではデリバリーよりコストが安価になる逆転が生じるとしていたのです。
 ところが、前市長の政治的判断から、平成27年度の2学期より中学校デリバリー給食が16校においてスタートしました。宮原、警固屋小学校は音戸学校給食共同料理場から搬送することで、それを除外した訳です。
  諮問機関で議論する際、保護者や生徒にアンケート調査を実施しており、それによると、保護者の7割は中学校給食を望んでいるも、デリバリー給食には反対が多数を占めていました。そこで前市長は、他の自治体で多く見られる、選択制デリバーリー方式を採用したのです。これならデリバリーに反対する保護者の矛先を交わせることができ、総じて選挙に有利に働くとの目算でしょう。
 しかも、先の2億3千万円の試算は、あくまでデリバリー給食を全員喫食した場合の金額ですので、半分の生徒が持参弁当を選択すれば、市の持ち出しは半額になるという訳です。
 デリバリーの際、呉市が負担する構図は次の如くです。先ず1食当たり500円程度かかりますので、その内食材費としての保護者からの給食費調達が300円、その差額200円を人数分呉市が税金で補填することになります。
 実際、平成27年度2学期から29年度までの2年半の事業者との契約では、市内を北部、中央部、東部の3地域に区分して入札した結果、1食平均単価が、222.7円でした。これに対し第2期契約期間の平成30年度から令和4年度までの5ヶ年契約の入札においては、平均単価は278.7円に跳ね上がりました。市として1食当たり56円の負担増となったのです。それは喫食率が低下していることが要因です。
 生徒がデリバリー給食を注文する数が減ったとしても、事業者の調理場整備に係る投資コスト回収、その光熱費、調理員の人件費、搬送コストは大幅に減りませんので、経営を圧迫することになります。それを防ぐには事業者として応札単価を上げざるを得ない訳です。
 実際、導入初年度の平成27年度の喫食率は45%。平成30年度末で27%、令和元年度末では23.4%にまで落ち込みました。以前私が追求した際、喫食率20%を切ると、業者が立ちゆかなくなる可能性について答弁しておられます。
 呉市は平成30年度から5ヶ年で、デリバリー給食委託費として総額6億4,400万円の債務負担を予算組みしており、年平均1億2、880万円となります。この時の想定喫食率は50%だったことが、私の先の予算委員会での質疑で明らかになりました。これより大幅に喫食率が下がっていることで、30年度予算は5,600万円、令和2年度予算は5千万円に減額されたのです。

 一方、平成21年に改正施行された学校給食法の第8条に基づく学校給食実施基準では、学校給食の対象を全児童生徒としています。ということは、選択制デリバリー給食そのものが、学校給食法の趣旨にはなからそぐわないことになります。
 この度再度市教委が実施したアンケート調査によると、多くの現場教諭からは、「現在のデリバリー給食では食育が十分できない」との声が多々寄せられました。これまで市教委は、デリバリー給食は事業者委託するにしても、献立は市の栄養職員が作るので問題ないと豪語してきましたが、喫食率が2割辺りまで落ち込んだ現状では、正にその通りです。いわんやこれが当初の50%喫食率だったとしても、それは五十歩百歩なのです。何故なら、持参弁当は食べ残しがないように、母親が我が子の嫌いな惣菜は入れないからです即ち栄養バランスを保持できないのは最初から分かっていたことです。
 しかも学校教育の中で給食時間は重要な食育における実地の場と位置付けられています。それが同じ教室内で、ばらばらの献立を生徒が食しているのですから、その時間は意義が極めて希薄なものになってしまいます。
 実は、導入当初は生徒より教諭の方が喫食率が低かったため、現場で示しがつかない訳です。これを市教委が指導して、教諭の喫食率を上げたため、ようやく全体で45%になった経緯があるのです。
 喫食率減少に歯止めがかからないのは、当初予定していた自校調理と同じ食缶方式が、地元業者が入札から撤退したことで広島市内の業者になり、そのことで弁当箱方式に急遽変更になったことが一番の理由でしょう。遠方から運搬して来るための保温を第一に考えたものです。また特に夏場は、ある程度低温状態にしておかないと腐敗しますので、そのことで冷たい食事となったのです。一番人気のカレーもレトルトにせざるを得ませんでした。
 小学校での暖かい食缶方式に慣れている生徒から見れば、美味しくなかったため、ドミノ現象の如く年々喫食率低下を招いたのです。そうなりますと、夫婦共稼ぎのため、自宅で弁当を作る時間的余裕のない家庭では、生徒にお金を持たせコンビニ弁当になります。そうなると、栄養価が益々なくなり、ミネラルも欠乏し、勉学にも力が入らない状況下に陥って行くのは必定です。

 そこで一部の議員からは、「デリバリー方式を維持しつつ完全喫食制も検討すべき」との意見が出始めました。これまでは「喫食率の向上を目指すべき」と主張していたのが、これこそ限界であると悟ったからです。
 そうではなく、デリバリーを廃止して、小中学校給食共同調理場建設に方針転換を図るべきなのです。丁度、旧市内の小学校自校調理上場の多くは老朽化しており、近い将来建て替えねばなりません。昔から比べれば児童生徒は激減しており、建て替えたとしても、学校統廃合も待ったなしになっていますので、無駄な投資になりかねません。勿論理想は学校毎に提供する自校調理方式がベストだとは思いますが、経費増のことを考えますと、共同調理場方式は、現状でのベターの選択です。
 前市長が政治的に導入した施策ですから、当時はこれを見直すことに言及することができませんでした。ところが市長が交代した今、いつまでもこの愚策を踏襲する必要はさらさらない訳です。市長がその気にさえなれば方針転換は容易なのです。そのためにも、市民が世論を形成して援護射撃をして頂きたいと切望しています。
 デリバリー委託契約は残すところあと3年しかありません。従いまして私は、「今年度を含め2年間で方向性の結論をだすべき」と、3月定例会での本会議で予算討論を行いました。

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