街頭演説集

第235回 呉市営住宅条例の改正

市営住宅の連帯保証人削除は家賃滞納者の増加に繋がる!

Facebook 2020.5.8

 昨日はゴールデンウィーク明けの初日で、クールビズのスタートでもあります。しかしながら昼夜の寒暖が激しく、朝7時半に駅前に立ったものの突風が吹き、幟旗が何度か倒れる程の肌寒さでした。

 さて、235回目の演説テーマは呉市営住宅条例改正についてです。
 民法改正に相まって、国土交通省住宅局課長通知もあり、全国一斉に公営住宅条例の改正が去る3月定例会でなされました。
 改正のポイントは3点。

  1. 敷金の定義化によるもの
  2. 修繕費の入居者と施設管理者の住み分け明確化
  3. 連帯保証人の削除

です。
 この中で最も深く検討を要するのが連帯保証人条項です。国の通知には、社会情勢の変化に応じて身寄りのない弱者が結果的に公営住宅に入居できない状況があるとして、それを回避するよう自治体に求めています。
 そんなことは言われるまでもなく、呉市を初め多くの自治体では、社会的弱者に配慮する但し書き条項があるのです。呉市の場合、条例第12条「入居の手続」第1項で連帯保証人2名の連署の請書提出としつつも、第3項では、「特別の事情があると認める者に対しては、連帯保証人の連署を必要としない」と、記述されているのです。つまり場合によっては1名の場合やゼロの場合も現実としてはある訳です。
 また、同様の但し書きとして第15条にも、家賃の減免または徴収の猶予が記述され、第19条第2項にも、敷金の減免または徴収の猶予について定められているのです。
 この但し書き条項が連帯保証人、家賃、敷金全てにおいて記述されているのは、特段の事情がある者に十分配慮していると言えましょう。この事情の中には、西日本豪雨で被災された方で、資金繰りにお困りの方や身寄りのない方で保証人をお願いする方が皆無の場合等が含まれる訳です。

 国は通知の中で「住宅管理標準条例案」なるものを提示しています。これは自治体が公営住宅法に基づき条例を定める場合はこうすべしという、いわゆる条例のひな形です。ですからこれはあくまで参考であって、その通りにしなくてはならないことは全くありません。しかも地方分権一括法制定以来、国と地方自治体の関係は対等と定められ、国が地方自治体に発していた「通達」が、より強制力の低い「通知」に変わっているのです。
 その上でこの度国から示された標準条例案には、連帯保証人条項が削除されていたのです。呉市も同様にこれをそのまま踏襲し、条例案を議会に提出しました。これは一見社会的弱者に配慮しているように見えますが、実は大問題でした。
 そもそも連帯保証人とは、住宅の場合で言えば、家賃を滞納した場合に代弁する責務納付を負う方です。これにより大家に対し損害保証する制度です。単なる保証人ですと、保証人に家賃請求した場合、本来の契約者から徴収努力をして下さいという「抵弁権」が付与されていますが、これでは十分な担保能力になり得ません。ですから、抗弁権を有しない連帯保証人が必要な訳です。
 加えて入居者にすれば、連帯保証人に迷惑をかけないよう、家賃納付に責任を持とうとします。それが連帯保証人がいなければ、親戚や親しい知人に直接迷惑をかけないとの甘えが生じ、結果的に滞納が増えることが容易に推察されるのです。つまり連帯保証人のもう一つ意味は、契約者に責任を持たせるという潜在力があるのです。
 呉市では過去、市営住宅住人がある意味故意で家賃滞納を続け、呉市の度重なる督促に応じず裁判を起こされたことがあり、その場合は呉市が勝訴しています。このようなケースは希ではありますが、家賃滞納で本当に支払いができなければ連帯保証人に請求し、最終的には生活保護や老人ホーム等福祉施策を活用して保護する道はあるのです。これは憲法の保障する生存権によるものです。
 とは言え、これは最後のセーフティネットですから、公共と言えどもやはり民間契約と同様賃貸においては、連帯保証人を付けるのは常識です。特に公共の場合、不良債権化すれば、それを督促したり家庭訪問したりするための人件費がばかになりませんし、とりもなおさずこれは市民の血税です。
 しかも、本人の死亡や大病煩い等で不納欠損処理することにもなり、これらのしわ寄せは全て市民に向くのです。
 このようなリスクを少しでも緩和するのが連帯保証人の意義なのです。従いまして、既存の連帯保証人2名を必要とする条項は残し、特段の事情に対しては、但し書き条項や更にそれを補う施行規則の拡充で対処するべきだったと考えます。

 一方、家賃の収受に関しては、呉市では指定管理者制度を導入していますので、民間会社が徴収業務を請け負っています。滞納者に対しての督促もその範囲内です。
 ところが、この4月1日からの新規入居者は連帯保証人が付いていませんので、督促業務を強化し、それを指定管理者ではなく呉市職員が担うということです。具体的には、これまで6ヶ月滞納があったら督促に動くのを2ヶ月で動かざるを得ないということです。 これでは市職員に余計な負担がのしかかるばかりか、連帯保証人の有無に関して、既存契約者との不公平格差までが生じて来るのです。
 坂町では、この度の改正で、連帯保証人2名を1名に減じる小幅な改正に止めました。これも一つの方法ですし、完全になくすよりは評価できます。国の標準条例案に従わなかったことで、あっぱれと言えるかも知れません。一般質問に対して町長も「連帯保証人を完全削除すれば、町民全体の負担に関わる」と否定的な答弁をしておられます。
 呉市は条例改正案説明の際、「広島県と広島市が連帯保証人条項を削除すると聞いている」とし、自分達に有利な事例のみを議会に披露しました。坂町の様な事例も紹介し、客観的に議論する場を提供するべきでしょう。
 結局、呉市がいつも国のイエスマン、議会もそれに同調ありきでは、地方自治がよくならないと思う訳です。今後徐々に家賃滞納が増え、不良債権化が進み、それがボディブローのように利き、市民への負担に繋がって行くのではないか、と危惧しています。

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