街頭演説集

第239回 スーパーシティ法成立で、合意なく個人情報が民間流出!

Facebook 2020.6.1

 本日6月1日から学校が再開。児童の登校を見守りながらの、239回目の街頭演説です。テーマはスーパーシティ法成立についてで、連続して国政への意見具申となりました。

 さて去る5月27日、国会は新型コロナに係る対策たる第2次補正予算案を閣議決定しました。それにマスコミ取材が集中する中、その陰でスーパーシティ法案も同日参議院を通過し採択されました。新聞では一面に補正予算31兆円の見出しが躍りましたが、スーパーシティ法成立に関しては、目立たない隅っこに小さく成立法律名のみ記載しているに過ぎません。つまり、国民が殆ど知らない間に同法が成立したのです。しかも新型コロナのどさくさに紛れ、マスコミを煙にまいたのです。
 スーパーシティ法案は、平成26年に施行された国家戦略特区法の改正案としての位置付けです。平成29年、安倍首相のお友達が経営する加計学園による獣医学部新設計画に対し、今治市を国家戦略特区に指定することとで、文科省の意向に逆らって強引に認可したいわくつきの法律です。
 国家戦略特区に指定されますと、法律で障壁になっている部分を特例で規制緩和したり、税の優遇措置を受けられます。その地区に特定して経済を活性化させようとする地方創生の切り札的存在だった訳です。規制緩和により、本来できないことを所管の省庁に申請して、認可を受けるものです。
 それに対してこの度の改正は、支払い、金融、遠隔医療や遠隔教育、ドローンによる配達、自動運転走行、環境、エネルギー、防災システムなど、合計10種類の経済分野において各省庁ばらばらに申請する必要はなく、一括で内閣が承認するというもので、「まるごと未来都市」と言われています。申請も簡略化されるばかりか、総合的な未来都市づくりを行う点で、「スーパーシティ」と呼ばれているのです。
 この仕掛け人は、規制改革、グローバリズムの代理人竹中平蔵氏でした。彼は、首相の諮問機関として起ち上げた「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会の座長を務め、首相に答申したのです。
 国家戦略特区に指定された自治体は、運営母体となるデータ連携基盤事業者を選定し、自治体の所有する住民情報をそに明け渡すことができるというのです。選定された事業者はAI(人工知能)によりデータを収集、管理、分析し、効率的な行政運営に活用代行できると共に、指定特区は未来都市の実験台になるという訳なのです。

 これらだけを聞くと、一見ばら色の未来が拓けるようにいいことづくめに思えますが、大きな3つの問題点があるのです。

 第一は、個人情報保護がなされなくなるという問題です。自治体の住民個人情報を民間に明け渡すのは法律上可能なのか疑問に思われる方も多いでしょう。例えば国が所有する国民の個人情報については、行政機関個人情報保護法第8条第1項で、他の実施機関に提供することは禁じられています。ところが第2項に例外規定があり、その第4号では、「明らかに本人の利益になるとき、特別の理由のあるとき」は、本人の同意がなくても提供が可能としているのです。政府は、スーパーシティを展開するに当たって、この例外規定を適用しようとしていると推察されます。
 これは国家機関による個人情報の活用ですが、自治体においては各々制定している個人情報保護条例が規制根拠になりますが、これも同様に例外規定が見られます。
 例えば呉市個人情報保護条例第10条で、保有する個人情報の提供を制限しつつ、但し書きで、「特別な理由があると実施機関が認めた場合はこの限りでない」としているのです。これはどの自治体も同様です。これら特別の理由として、国家戦略特区指定が含まれなければ、スーパーシティを推進することはできないため、結局は個人情報が、本人の同意を得ないまま流出する可能性が十分あり得ることになります。
 ということは、自治体のデータを、連携事業者が提供を受け、その上で同事業者が持つ蓄積データと合算したビッグデータを、その事業者が内密に他の事業展開に活かしたり、他の事業者に転売できるうまみがある訳です。勿論これらは、本来の利用目的を逸脱しているため、企業に制約得を課す個人情報保護法に抵触しますが、現在でもこのような闇取引が行われている訳で、非常に危険です。企業にとっては今後の経済活動展開において、大きなうまみがあると言えましょう。

 第二は、法にある住民合意の条件はどうやってクリアできるのかという問題です。
 それは、法定協議会である区域会議で各々決めていいことになっています。区域会議は、国の特区担当大臣、指定自治体、データ連携基盤事業者、関係団体の4者で構成することになっています。この内最初の3者は当然スーパーシティ推進者です。
 残りの4者目は、住民自治団体の代表やそのことに詳しい有識者が入ることが予想されます。ところが、スマートシティそのものに反対意見を持つ者はそれに入れません。つまり行政のイエスマンしか委員になれないのです。ここで議論すれば、住民代表も入っているから住民同意を得たとみなすことができるようです。これはよくある市長の諮問機関や教育委員会議と同様で、為政者のアリバイづくりに利用されることは目に見えています。
 もし百歩譲って、このためにわざわざ住民投票条例を制定し、投票を行ったと仮定しましょう。その結果、有効投票の45%の住民が反対しても、55%が賛成に回れば住民合意を得たことになるのです。その住民合意の仕組みは、個々の区域会議に丸投げなのです。もし行政や事業者による大量監視がいやなら、その町から転出するしかなくなります。国民の居住権すら侵害され兼ねません。

 第三は、スーパーシティを実現するためには、AIのみならず、大量情報を一瞬にして届けるシステムが必要不可欠となります。これは第5世代移動通信システム、いわゆる「5G」推進がセットになっているのです。
 これまでパソコンや、スマホ等端末間のデータ移動では、画像や動画などはダウンロードに時間がかかりました。データの容量が大きいからです。これでは例えば自動運転車を走行させた場合、道路に建設した監視カメラ画像による道路事情を管制室に送信しますが、1秒程度のタイムラグが生じます。その僅かな差で交通事故が発生するリスクを解消するために、一瞬でデータ処理が可能な5Gが必要となるのです。
 ところで昔テレビが普及した際、「2m離れて視なさい」と親から言われました。これはブラウン管から発生する電磁波が人体に悪影響を及ぼすからです。電子レンジなどもそうです。現在ではオフィスでのパソコンが労働者の目の前に釘付けですし、携帯電話を耳に当て長電話することで、人体の正常な機能が侵害されると言われています。生殖機能にも影響があり、近年少子化の一因にもなって来ました。ところがこのことをマスコミは採り上げません。
 それはスポンサー企業を忖度しているからに他なりません。政府も電磁波の危険には目をつむっています。経済停滞に直結するからです。実際に門真市では関西電力の変電所とそれを繋ぐ高圧送電線網が張り巡らせていることで、白血病死者が全国平均よりかなり高い数字を示しているのです。「電磁波&鉄塔の街」とも呼ばれています。
 実は5Gは、これより更に強い周波数の電磁波を出すのです。短い周波数なので、携帯電話の電波塔設置数よりも遥かに多く街中に設置することになります。100~1km程度の間隔で多数設置すれば、多くの人が電磁波で健康を阻害されるのは必定です。
 このような危険性から、ベルギーの首都ブリュッセルでは5Gを禁止しました。フィンランド首相も反対の意思表明をしたのです。我が国は今年春から5G実用化を進めるとして来ましたので、通信大手4者に対し、総務省が既に周波数の割り当てを完了しています。
 これらの危険性、他国の状況を何故マスコミは報じないのか、それは政府を忖度していると言われても過言ではありません。現在のところ東京新聞だけが、これに警鐘を鳴らしているに過ぎません。

 一方政府は、スーパーシティの先進事例として、カナダのトロントを挙げました。ここはマイクロソフトが連携事業者として参入しました。ところが区域会議に参画していた個人情報保護の専門家が、個人情報が守れないとして脱退したのです。加えて、市内全域に監視カメラが設置されることが判明し、市民の猛反発に遭い、この計画は潰れ、マイクロソフトを追い出したのです。
 中国では杭州市において、信号をAIが管理して渋滞緩和を誘導するスマートシティを推進しています。スマートシティというのは、全分野ではなく交通政策やエネルギー政策に特化したスーパーシティの一部分と言えます。
 これにアリババが参入しているそうです。ただアリババは、中国の軍産複合体の一部とも言えましょうから、米中貿易摩擦で将来的に不安要素はあるでしょう。万一連携事業者が倒産したら、その蓄積情報は別の会社に移ることになります。つまり、個人情報を管理するにおいて、そもそも民間企業に任せていいのかという疑問があるのです。
 結局スマートシティを進めて行けば、これに参入する企業は国内では東芝、後は外資が殆どですので、情報の海外流出、国際金融資本に情報を握られ、しかも敵国からのハッキングにより、情報混乱を招く可能性は十分あるのです。本来、これらのデメリットを含め慎重審査すべきだった訳ですが、国民には何が起こっているのか知らされていないこと自体が大問題なのです。

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