Facebook 2020.7.29
この制度はGo To キャンペーンの一環として、新型コロナで特に影響を受けた観光・飲食・イベント・商店街を支援するために、政府が今年度第1次補正予算で1兆7千億円を組んだものです。内、トラベル分は1兆3,500億円になります。
当初はこの事務を外注する予算として3,095億円を計上していました。ところが、いち早くスタートした持続化給付金の委託者として769億円で受注したサービスデザイン推進協議会が、構成団体の電通やパソナ等に749億円で丸投げしたことが発覚。20億円が中抜きされたとして、国会で野党の厳しい追求に遭いました。
そこで、Go To キャンペーンの委託費が高すぎるとの指摘を交わすため、発注方法を再検討せざるを得なくなった経緯があります。しかし結果は、省庁毎に発注を分担しただけで、総額の3,095億円は何ら変わりなかったことが判明しました。
具体的には、国交省所管のGo To トラベルの委託事務費として2,294億円、農水省所管のGo To イートは469億円、経産省所管のGo To イベントと商店街支援には各々281億円と51億円です。これとトータルすると、結局は3,095億円となる訳です。
さて、公募提案による企画競争の結果は、ツーリズム産業共同提案体が予定価格より399億円低額の1,895億円で受注することとなりました。この団体は、一般社団法人たる日本旅行業協会や全国旅行業協会、公益社団法人たる日本観光振興協会、(株)JTB、(株)日本旅行等7団体で構成されており、ほかに協力者として関連業界7団体が名を連ねています。
問題は、この度の構成・協力団体から観光族議員37名の自民党各支部に合計4,200万円が献金されていたことです。これは合法ではありますが、如何にも政治と業界の癒着構造が見え隠れしています。しかもこの内自民党二階俊博幹事長には、全国旅館政治連盟から330万円、旅館ホテル政経懇話会からは前身団体を含め140万円と、合計470万円が献金されていました。因みに二階氏は、この度の受注団体の構成団体の一つである全国旅行業協会の会長を、今日に至るまで28年間も務めているのです。
実は去る3月2日に、自民党の観光立国調査会では業界団体代表者を集め、観光・旅行産業の喚起策の要望を受ける形で、二階同会顧問が政府に強く要請した経緯があります。これがGo To トラベルの政策決定と、この度の見切り発車に繋がったと、容易に推察されます。
一方、7月に入ってから東京都を中心に、都会では急速に感染者の拡がりを見せています。特に東京では1日200人を超える日が連続し、ついには300人を突破しました。これは緊急事態宣言時でも見られなかった数です。
にも関わらず政府はこれらを感染第二波と位置付けることを極力避けています。第一波と比べ、重傷者や死亡者が少ないことがその根拠の筆頭です。加えて「緊急事態宣言再発令の状況にはない」と言及しており、経済活動再開に舵を切っていると言われても仕方ないでしょう。
この様な状況下で、当初8月から実施予定だったGo To トラベルを7月22日からに前倒ししました。つまり、夏休み直前の4連休から夏休みを含む、来年1月末までに期間延長したことになります。これは業界サイドに立脚した観光刺激策でしょう。
但し、東京都における感染急拡大を実情を考慮し、Go To トラベルから東京都発着の完全除外を決定したのです。これでは経済効果は4割も弱まってしまうことに加え、緊急事態宣言が地域発令もされていない中で、不公平が生じることになります。
そこで千葉県など東京隣県に宿泊して、夜は東京の繁華街に出向くことが横行したり、団体宿泊の代表者を東京都外の人を立てたりして、実際は東京都民が県外へ旅行するなど、巧妙な手口が出て来ることは火を見るより明らかです。これを防ぐ手立ては極めて困難ですし、旅行需要喚起により、全国から県堺を超えて往来が激しくなりますので、感染に歯止めがかからなくなることは誰の目にも明かでしょう。
ところで、Go To トラベルの仕組みはどうなっているのでしょうか?これは旅行業者を通じて旅行商品を購入する際にその半額を最大2万円まで公費助成する制度です。公費負担の内70%が旅行代金、30%がクーポン券で近隣の登録店舗での飲食に活用できます。つまり旅行商品価格中、35%が旅行代金、15%が飲食費に充てられ、自身の負担はトータル50%で済むという訳です。
7月22日までに予約済みの方には、後日助成分が還付されるということです。但し、クーポン券の場合はまだ準備が整ってなく、登録店舗も決まっていません。よってこちらは9月からの実施となりそうです。
この様に公費負担により旅行商品価格が安価になることで、旅行需要を刺激し、観光産業の復興に寄与できるという訳なのです。業界が自民党族議員に対し要望を繰り返し、その実現の見返りとして政治献金を行うのはある意味当然のことでしょう。
企業・団体からの献金は政治家個人へは禁止されたものの、政党支部へは可能とするザル法が存在する限りは、この政治と業界の癒着構造を断ち切ることはできません。
そもそも、このGo To キャンペーンは、新型コロナウイルス感染症が終息した後に、冷え込んだ観光・飲食等の産業を復興させる目的で予算計上されたものです。
今年2月から感染症が拡大し始め、さすがに5~6月には終息するとの甘い見通しから、8月から実施する計画でした。それが7月22日からの前倒しに加え、実施することそのものが、当初の予算の意図から完全に外れてしまっているのです。しかも最も需要の見込める東京都を外した訳ですから、その効果は半減します。況んや県外移動によって、感染が拡大することは目に見えていますから、この度は政策判断を誤った、時期尚早だった、と私はみています。
それよりも、緊急事態宣言の再発令も視野に入れつつ、強制力の発動を可能にし、合わせて休業要請した業者に対しては、その損失補償を政府の責任によって行えるよう、新型インフルエンザ等特措法を改正すべきと考えます。そうすることで、政府は業界の圧力を交わしつつ、感染症拡大を極力押さえ込むことに最大限努力するべきです。
現在の施策は、感染症拡大抑止のために外出自粛を求めたりする一方で、逆に県外移動を奨励し経済活動を支援することになっており、正に矛盾であり、支離滅裂です。「二兎を追う者は一兎をも得ず」との諺を今一度かみしめるべきでしょう。
今後、感染拡大が一層増えることは必定で、東京都だけでなく愛知県でも1日の感染者が100人を超え、過去最高を昨日記録しました。つまり地方都市にまで拡散しつつあるのは明かです。この最大要因がGo To トラベルだったとのレッテルを貼られかねません。「Go To トラベル」が「Go To トラブル」に一変してしまうリスクを大きく抱えているのです。もしそうなれば政府の責任問題にまで発展し、政権が吹っ飛びかねないと警告しておきます。