街頭演説集

第249回 「すずさん家」を広報しない観光施策の矛盾を鋭く指摘!

Facebook 2020.8.11

 本日8月11日は、249回目の街頭演説。テーマは、「すずさんに逢える丘」の活用策についてです。
 呉市は、アニメ映画「この世界の片隅に」のヒットを受け、ヒロインの「すず」が嫁いだと言われるゆかりの地を「すずさんに逢える丘」として整備するため、令和30年度に経費費を予算化しました。
 しかし、30年度は西日本豪雨災害の復旧を最優先したことで、予算を執行しませんでした。このため翌令和元年度に再度予算を計上。即ち設計・整備費として1,250万円、リーフレット作成費として46万円を組んだ訳です。この結果昨年度末にようやく「すずさん家(がた)」と銘打ち、完成したのです。
 ところが、それが一体何処に整備されたのか、住所を誰も知りません。一部の関係者のみが整備後のすずさん家を訪れたようですが、呉市は一切広報していないのです。市民の血税を使って整備した観光施設とも言える公園を、世に知らしめないとは大問題です。

 元々この構想は、アニメヒットにあやかり、観光施策の一環として予算計上されました。その後分かったのですが、この土地は、原作者のこうの史代女史から呉市に対し寄附されたもので、当局はこのことを一切説明しなかったのです。現段階でも公式には議会に説明は一切ありません。
 ということは、前市長が独断で寄附を受け、整備を部下に命じ予算計上となったことは明白で、言わばトップダウンの施策だった訳です。寄附を受け予算計上したからには、これを否決する訳にもいきません。
 ところが、この土地周辺の方々には一切知らされていなかったのです。ですから昨年度唐突に市の担当者が現地を検分に訪れたのには驚いたようです。当地は狭隘道路で参入するようになっており、それに連結する道路も車両はようやく通れはしますが、すれ違うことはできず、勿論整備後の駐車場用地もありません。
 加えて、地元住民としては観光客が押し寄せるのを歓迎していない向きがあります。つまり、地元のご意向を確認することなく、市長独断で一方的に進めたが故に、完成後も場所を公表できず、しかも案内表示設置や案内地図リーフレットも未だ作成できない状況なのです。今年度にまたもやリーフレット制作費を計上しているのもこのためです。
 それでも私は、昨年度着工前には地元説明会をやるべきと主張しましたが、地元との調整がつかないまま、開催を断念したようです。これではやることなすこと、前に進むはずがありません。観光とは、訪れる方をもてなし歓迎することが基本中の基本です。それが地元のご意向を無視した形で整備工事を強行したものですから、それに輪をかけ、暗礁に乗り上げた格好です。

 実は寄附を受けたこのゆかりの土地は、こうの史代さんの祖父母の家が建っていました。広島市西区に生まれ育った史代が、幼少時にそこへ訪ねて過ごしたことがある想い出の地だったのです。アニメではすずが、広島市中区江波から呉市に嫁ぐストーリーになっていますが、すずは史代を投影したものでしょう。
 嫁ぎ先は呉市上長ノ木となっていますが、これは実際にあった地名で、戦後の地番整理で現在は畝原町の一画に組み入れられました。ですから「上長ノ木」という地名は現存しません。現在ある「長ノ木町」という地名を創作用に模したものと錯覚されている市民もおられるようですが、これは間違いです。
 この祖父母宅は今から20年前に空き家になり、史代が相続し、数年前に解体されていたのでした。従いまして、建物はなく、その基礎部分を短い石柱として現地を整備しました。但し、井戸と大きな樹木は今も残っています。

 私は地元との調整を終えた暁には、観光客用に作成するリーフレットに3つの散策コースを入れるべきと主張しています。
 第一は、すずが嫁いだコースです。当時国鉄呉線に広島駅から乗車し、呉駅で降車。ここから市営バス辰川線に乗り、折り返し点のバス停で降車し、上長ノ木まで歩いたのです。これは史代も歩いたコースです。JRを利用して遠方よりすずを訪ねて来られる方向けのコースとなります。これは市が描いていたコースですが、問題はJRを利用せず自家用車でお越しになる方への対応です。
 そこで私が最も薦めるコースは、すずの買い物コースです。映画では初代呉市長澤原邸の三つ蔵が複数登場します。この旧澤原邸は国の重要文化財に指定され、呉市が管理を任されているのです。幸いにもこのすぐ隣にスーパーマーケットがあり、そこと協力関係を締結し、駐車場を利用させてもらうのです。そこからすずが買い物から帰途した道を歩いてもらうのです。ここから15分くらいで到着するでしょう。
 この際、呉市に散策コースを申し込んでもらい、澤原邸から案内するのです。この場合、観光ボランティアガイドの会の方にコースを研修してもらい、案内してもらうシステムを構築するとよいでしょう。他のボランティアとの兼ね合いから有償にするべきだと思います。でないとボランティアの方が苦労されるからです。
 また地図リーフレットには、すずが買い物をした当時の商店街「東泉場(とうせんば)」を図示するとよいでしょう。ここは現在の本通5丁目から6丁目になります。当時の地図、昭和14年のものが呉市図書館に現存していますので、リーフレット作成の際に活用すべきです。また、すずが帰りに迷い込んだ遊郭は現在の朝日町です。これも表示すればよいでしょう。
 第三は旧海軍墓地コースです。ここは墓地の参拝客がそこに駐車した上で、徒歩ですずさん家に向かうのです。地図リーフレットは海軍墓地管理棟に置いておき、私が副理事長を務める公益財団法人・呉海軍墓地顕彰保存会の協力を仰ぎます。
 これらの体制が整った段階で、市政便りやホームページ、観光情報「くれナビ」で一斉広報するのです。とにかく整備のために行使した予算を無駄にしないことが、最優先されるべきでしょう。その上で新しい観光スポットとして位置付ける訳です。

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