街頭演説集

第255回 戦艦大和建造大型旋盤と大型試験機展示は回遊性を念頭に

Facebook 2020.9.25

 秋の連休明けとなる9月23日は、255回目の街頭演説。テーマは戦艦大和に纏わる大型工作機械についてです。

 呉市はこの9月定例会において、戦艦大和建造に関わった大型旋盤の取得に係る補正予算1億5千万円を成立させました。
 この大型旋盤は、昭和13年に呉海軍工廠がドイツのワグナー社から2基を輸入し、軍艦を建造する際に使用していました。長さ17m、幅と高さが各々5mもあります。戦艦大和の当時世界最大の主砲46cm砲を製作する際に、材料の鉄を削ったと言われています。戸高大和ミュージアム館長によると、「200tの鉄の塊から160tの砲身を削り出した」と言います。
 敗戦後1基はGHQに押収され、性能不良で廃棄されましたが、もう1基は奇跡的にGHQの手から逃れ、昭和53年に神戸製鋼所高砂工場に払い下げられ、船舶用ディーゼルエンジンのクランク軸加工に使用されました。
 退役後は、神戸製鋼所の取引先だった(株)きしろ播磨工場に移管され、船のシャフト製造等に活用し復活。老朽化のため平成22年に再度退役していたのです。
 これをきしろから呉市に寄贈されることとなり、兵庫県播磨町から船で輸送し、クレーンで吊り上げ運搬する費用に2,200万円かけます。分解、組み立て、さび防止目的の塗装やコーティングに800万円、地盤調査費として1千万円で、先ずこれで計4千万円となります。残り1億1千万円は、地盤整備に6千万円、設置ライン作成と屋根設置に4千万円、作動イメージCG作成等に1千万円ということです。
 実は、去る6月に行政報告のあった、大和ミュージアムリニューアル検討3案の中に、大和波止場の屋外展示化案2案が含まれていました。寄贈を受けるまではいいのですが、それを大和波止場に展示することを決め打ちしての予算計上であることが解ります。
 と申しますのも、この度の財源の主なものは国の新型コロナ対策関連予算である地方創生臨時交付金を充てることにしました。新型コロナにより大和ミュージアムが休館となったことも受け、来観客が激減し、この4月から8月まで僅か71,700人に止まり、対前年度同月比で85%の収入減となりました。コロナ禍後の復調を支援するために、この大型旋盤設置を急ぐことにすれば、その展示するまでの費用のほぼ全額を国の予算を使えるという訳です。

 ここまではいいのですが、この度の1億1千万円には、大型旋盤の設置に止まらず、懸案だった戦艦大和大型試験機設置も対象に含まれていたのです。予算書には「大型旋盤の展示に伴う地盤整備等」と記述されていますが、この「等」が曲者で、大型試験機もこれに含まれており、当局はそれを巧みに隠していたのです。
 この大型試験機も、昭和初期に呉海軍工廠がドイツから輸入し、戦艦大和建造の鋼板の強度試験等に活用していました。長さ28m、幅、高さ共に5mもあり、戦艦大和1/10模型の26mよりも大きい訳です。
 戦後は鉄道技術管理所の管理下で、新幹線の鋼板強度試験等に利用されていました。退役した昭和42年には広島大学工学部に移管、展示されていたのです。
 それを平成23年度に呉市が3,400万円の輸送費用の補正予算を組み、広島大学から寄贈を受けました。ところが展示場所が定まらないまま、分解して現在まで、自衛隊潜水艦基地のあるアレイからすこじま駐車場の奥にシートをかけられ、風雨にさらされ続けて来たのです。
 この度の補正予算1億1千万円の中には、大型旋盤と併せ、大型試験機も一緒に展示しようとする計画が透けて見えます。但し、双方の展示計画はきちっと立案した上で、議会に報告し、意見を聴取するべきでしょう。
 と申しますのも、この2点の大型工作機械を大和波止場に設置することになりますと、宝町には、大和ミュージアムとてつのくじら館が既にありますので、そこに観光客が集中することになります。これでは、目指している通過型観光から宿泊型観光への転換を図ることはできません。

 ところで前市長時代には、宝町から幸町へ至る回遊性について調査して来た経緯があり、新政権になってこのコンセプトが消えてしまった感がある訳です。幸町の目玉観光施設は、国の重要文化財である入船山記念館ですが、これが平成17年に大和ミュージアムがオープンして以降、来館者が激減した経緯があるのです。
 これを補うため、新たな観光資源として、呉市は幸町にある旧自衛隊集会所「青山クラブ」を2億円かけて国から取得しました。ヒットアニメ「この世界の片隅に」を通じて、一躍脚光を浴びた施設です。これを耐震・老朽改修するには30億円もかかり、維持管理費で年平均9千万円も必要とするのです。これを新市長は、マニフェストで実現させるとしていますが、今年度も外部有識者での検討会議費を30万円計上しているものの、現段階で未執行のままです。これは妙案がないことの証拠です。
 青山クラブを解体し、一部外壁をモニュメント化して残した上で、中庭に大型試験機を設置すれば、大和ミュージアムやてつのくじら館に来館した観光客を幸町に誘導することができる訳です。そうなりますと、宿泊し、夜の屋台を楽しんだり、中央地区商店街を買い物に訪れる観光客も増えて参ります。
 私がこれを以前から一般質問で提唱しているのですから、呉市は大型旋盤の寄贈を機に、例えば、旋盤は大和波止場に、懸案の大型試験機は青山クラブにと、分散展示する計画立案に向け、早急に検討すべきなのです。そうすれば、30万円の予算が生きるし、市長の掲げるくれワンダーランド構想にも貢献できようというものです。

タイトルとURLをコピーしました