街頭演説集

第257回 中学校は全員喫食ではなく全員給食への勇気ある改革を!

Facebook 2020.10.8

 去る10月5日は257回目の街頭演説。テーマは中学校デリバリー給食の見直しについてです。この日は強風に見舞われ、何度か幟立てが倒れる中での演説となりました。

 呉市は平成27年度の2学期より、給食未実施だった中学校における選択制デリバリー給食に踏み切りました。当時の市長が政策転換し、政治色の濃い逆転劇となったものです。
 と申しますのも、教育委員会の諮問機関であった中学校給食検討委員会で示された1案である小中共同調理場方式が、経費的にも有利であるとの内容が軽視されたのです。即ち、新たなハコモノ建設により、イニシャルコストは嵩むものの、老朽化した各小学校自校調理場建て替えや、デリバリー給食でのランニングコスト高による補助金が積み重なり、15年間で総コストが逆転する試算を、議会にも教育委員会議にも敢えて報告をしなかったのです。恣意的に結論ありきでゆがめられた証拠は他にもあります。
 市教委は当初議会に対して、デリバリーによる民間業者の調理場も、公設共同料理場も官民の違いはあっても本質は変わらず、小学校自校調理と同様「食缶方式」であると説明していたのです。食缶方式とは、汁物をバケツの様な大型容器に入れ、温度を保ち、配給現場で、それを各生徒の容器に注ぐ手法です。
 ところが、間際になって議会への報告では、「弁当箱方式」と説明を変更したのです。その理由は明確には示されませんでした。実は、市教委は事前に市内の弁当業者と打ち合わせし、市内業者のみで競争入札を実施する意向だったのです。それが実施段階になって、打ち合わせていた市内業者が一斉に手を引くことが明らかになりました。
 それは、既存の仕出し用調理場とは別に学校給食専用の調理場を新設することを条件にしたからです。直前に広島市の公立学校給食でノロウイルスによる食中毒事件があり、それを受け、学校給食の調理場を別枠にしないと原因解明が困難となり、給食再開が遅れると考えた市教委が打ち出したものと推察しています。
 そうなりますと、市内業者は新たな設備投資を余儀なくされます。ところが、それを回収するには大きなリスクがあったため、手を引いた訳です。そのリスクとは、デリバリー給食といっても教諭と生徒の全員喫食ではなく、弁当持参とデリバリー注文を自由に選択できる制度だったことに起因しています。
 結局広島市内の業者しか応札が見込めないこと分かり、急遽食缶方式を断念し、弁当箱方式に変更せざるを得なかったのが真相です。即ち、遠方より運ぶ必要があるため、献立の保湿や保温を可能な限り確保するには、食缶方式では困難だからです。

 さて、問題の喫食率は、当初予算段階では50%を想定していました。ところが、導入当初のデリバリー喫食率は教諭と生徒を合わせて45.1%に止まったのです。それが令和元年度当初において、生徒だけで27.0%まで下降線の一途を辿ったのです。
 喫食率が低下すれば、弁当注文数が減ります。弁当価格は1食当たり各社各々600円弱、保護者から徴収する食材費、即ち給食費300円との差額は税金で補填します。注文数が減れば業者の売上減に直結する訳です。
 ところが呉市は業者との契約において、単価方式を採用していますので、注文数が減れば呉市から業者へ支払う補助金が減るだけで、直接影響はありません。実際令和元年度の補助金は、喫食率低下のため前年度に比べ1,200万円も減っています。逆に業者にとっては死活問題になります。製造ラインにおける調理員や光熱水費、配送に係る運転手人件費やガソリン代は、注文数の多い少ないに関係なくかかって来るからにほかなりません。
 先般の決算委員会では、生徒における平成30年度平均喫食率は28.6%だったのが、令和元年度では22.2%まで下がり、実に6.4%減になったことが、私の質疑で判明しました。このままですと、令和2年度平均では20%を切ることが予想されます。以前私が委員会で質疑したところ、業者が立ちゆかなくなる限界線は20%と考えられる旨の答弁を引き出していた経緯があるのです。
 加えて先般、尾道市が一足先に、この20%を切ったことで、デリバリー対象校12校を、他の4校同様、共同調理場方式か親子方式かに転換し、デリバリー給食廃止方針を打ち出しました。その整備計画を今年度末までに立案すると言います。
 呉市でも、デリバリー給食の廃止検討は過去に一切答弁せずに、敢えて避けて来ました。議会の追求に対し、あくまでも「喫食率の向上を目指す努力をする」との答弁に終始して来た経緯があります。喫食率向上のため、市教委は小学校卒業児童の保護者への説明会にわざわざ乗り込み、デリバリー給食をピーアールして来たにも関わらず、その効果はなかったのです。
 その理由は、小学校の食缶方式と比べ、デリバリー弁当箱方式では冷めていて美味しくないこと、一番人気のカレーがレトルトであること等が挙げられます。残食率も圧倒的にデリバリーが高いことが分かっています。持参弁当が増えれば、親は我が子の我が儘を聞き入れ、嫌いなおかずを弁当に入れませんので偏食は直らず、栄養が偏ることで食育は全く成り立ちません。
 更に、喫食率が下がることで、食材購入費を業者が節約すれば、地産地消も遠のいてしまいます。旬の野菜等ではなく、冷凍ものが多用されることも考えられます。デリバリー給食と言えども献立は、呉市の栄養職員が献立委員会に提示しますが、食材の購入先まで、指示することはできません。そこまで市教委が介入すれば、偽装請負になりかねません。これらの理由により、導入当初から私のみがデリバリー給食に反対して来ました。
 現在、呉市を北部、中央部、東部に分けて3業者と5ヶ年契約を締結していますが、今年度は丁度3年目に当たります。喫食率が下がれば、業者への補助金が膨らむことを予想しています。そうしなければ、業者が撤退する可能性があるからにほかなりません。

 一方、呉市の学校給食調理場は合併町の共同調理場を含め32箇所あり、内、昭和49年以前に建ったのが7施設、昭和50年から63年までに建ったのは18施設もあります。平成になって建てたのは僅か7施設です。
 ということは、早晩建て替え時期にさしかかって来ます。その際各々建て替えるのではなく、小学校と中学校を合わせての共同調理場に吸収させるのか、遠方になるので、合併町の共同調理場は建て替えるのか、これらの検討が必要です。全て自校調理場にするのは、食育、地産地消を考えると最も効果的かも知れませんが、すると人件費や建物管理費が嵩みます。従いまして、小学校自校調理場建て替えに合わせて小中共同調理場へシフトするのがベターと考えます。
 これらの状況下で呉市議会文教企業委員会は、去る6月定例会に学校給食に係る提言をまとめました。これには、「全員喫食を目指す」としています。ただこれは、デリバリー給食推進派と廃止派の中庸を採った玉虫色の表現に止まっていると見ます。「全員喫食」ということは、選択制ではなく全員デリバリー給食という意味にも取れるからです。そうではなく、「全員給食」を目指すべきでしょう。
 というとことは、尾道市に習って呉市も早急に学校給食共同調理場の整備計画策定の検討に入るべきです。私は平成27年度に姫路市を視察しましたが、ここでも、デリバリー給食の失政を反省し、共同調理情方式に政策転換しておられました。現在の施策は前市長の負の遺産ですから、それを勇気を持って転換できるのは、現市長でこそと言えましょう。

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