街頭演説集

第265回 そごう呉店再開発、呉市が権利1本化でリスクを抱える!

Facebook 2020.12.1

 本日11月30日は、265回目の街頭演説。テーマは、昨日収録したYouTube「自然共生党チャンネル」と同様「そごう呉店跡地活用の問題点」です。

 今呉市民が最も感心を寄せているのは、駅前再開発、特にそごう呉店の跡地活用でしょう。平成25年1月に閉店して、もうすぐ丸8年が経過するも、未だ空きビル状態になっているためです。
 先ず、前市長と現市長のそごう跡地活用と呉駅前広場の整備に関するスタンスの違いについて押さえておきます。小村前市長は、そごう跡地は権利者の合議による民間主導の再開発、それと分離した形で隣接する駅前広場を呉氏主導で再整備するとの考えでした。
 これに対し3年前に市長選があった際、初当選した新原現市長は、当時の小村氏へのアンチテーゼを掲げました。それは、そごう跡地と駅前広場、駅舎建て替えも含め総合的に、しかも官主導を開発を進めるというものでした。これらは似ているようですが、大きな違いがあります。
 ここで、そごうが閉店した時点の権利関係を押さえておく必要があります。建物の地上権は(株)そごう・西武が77%、呉市が19%、日本通運(株)が1%、個人6者が3%となっていました。底地は呉市が79%、そごう・西武18%、日本通運3%です。つまり、このビルを再開発するには、9者の権利者で組合を組織し、呉市も1権利者となってそれに加わり、民主導で行う必要があったのです。
 前市長は、建物と底地をセットで、組合が民間公募をして、最も呉市経済に貢献する優れた案を採用しようとしていました。つまり売却価格はある意味度外視したのです。そこで、簿価の評価損を恐れる個人所有者を納得させるために、一旦そごう・西武に相場価格でそれらの権利を買い取ってもらう方針を立てたのです。
 平成27年9月の議会への行政報告で、個人5者の権利においてそごう・西武による買収に漕ぎ着けた旨を公表しました。残る1者は合意を得ているも、手続きのみがまだ完結していないと説明し、事実上3者に集約できたとして、2ヶ月後に迫った市長選への実績を築いたのでした。しかし選挙結果が新市長誕生となったのは、ご承知の通りです。

 さて新市長は、そごうの再開発と呉駅周辺をセットで開発するとのマニフェストにそって、民間有識者を諮問機関に招聘し、呉駅周辺地域総合開発基本計画策定へ突き進んだのです。これがしくじりの火種を残すことになりました。
 即ち、今年4月にようやく基本計画策定に漕ぎ着けました。その概要は、そごう再開発は、隣接するJAも巻き込み、そればかりか、公共施設を入れ、更に呉駅前広場を拡張し、その一部をそごう底地を活用するというものでした。しかも交通ターミナルを位置付け、その事業を国土交通省直轄事業とし、呉市の負担はかからないとしたのです。
 そのスケジュールは、今年半ばに、呉市を含む3者組合が公募し、その優先交渉権者の提案を基に事業計画を今年度末に策定。翌令和3年度に開発業者が詳細設計を行い、令和4年度にそごう建物を解体し、複合ビルを新設するとしていたのです。実際呉市はそれまで20社と直接面談し、その内数社が応募に意欲を示していたのです。
 ところが、公募直前になって事態が一変。新型コロナと日本製鉄(株)撤退による景気悪化を踏まえ、急速に応募予定企業の投資意欲が減退したのです。つまり予定通り公募を行っても、応募がないという最悪の事態を招いてしまいました。
 そこで公募を最低1年遅らせることにしましたが、国交省による駅前広場の交通ターミナル化の詳細設計は令和3年度以降として着々と進めていたため、開発事業者がそれに乗り遅れるとなると、問題が生じるのです。それはそごうの底地の一部分を交通ターミナルに取り込むという計画だったからです。その時点で開発業者への売却が進まず3者組合所有のままであれば、ターミナル設計も座礁に乗り上げる訳です。
 そこで市長は、禁断のウルトラCに手を出しました。そごう建物・土地の権利を再集約、即ち、そごう・西武と日本通運から相場価格で呉市が一旦買い取る方針を明らかにしたのです。これは去る9月定例会前でした。同定例会に4億4千万円の補正予算を提出し可決されましたが、これに反対を表明したのは私一人だったのです。
 何故、買い取ることが危険なのかといいますと、買い取った後に売却できればいいですが、新型コロナの収束が見えない中、日新を吸収した日鉄の撤退も2年半後より早まる可能性が予想されている訳で、保留した企業が舞い戻って来るという確証が持てないからです。そうなりますと、呉市が負の遺産を抱え込むことになってしまいます。しかし、去る10月28日に売買契約を締結し、11月4日に既に登記を済ませてしまったのです。建物の地上権を除くそのものの価値2千万円は寄附してもらう形となり、結局は4億2千万円で購入したのです。つまり、もう後戻りはできなくなったのです。

 実は、そごう閉店後にそれを買い取った悪しき実例があるのです。それが平成12年12月に閉店した福山そごうです。福山市は底地の寄附を受けることを条件に、建物の権利を27億円で購入。大規模改修に7億円も投じ、合計33億円を支出しました。それを商業施設特別会計を新たに組み、テナント料で投資額を回収しようとしたのです。
 ところが、その全てを民間事業者に貸し付ける話はまとまらず、その一部を(株)天満屋の子会社である丸田産業(株)に貸付け、同社が福山ロッツに再テナントする形となりました。残りのスペースは男女共同参画施設「イコールふくやま」等公共施設として利用したのです。
 その福山ロッツも平成25年に10年間で撤退。その後ロッツ部分の更に一部を大和情報サービス(株)に貸付け、リム・ふくやまがオープンしたのです。それ以外のスペースは県と市の公共施設を無理矢理入れました。しかしリム・ふくやま「エフピコ」も、今年8月末を以て撤退してしまいました。
 結局福山市は、そごうを買い取り公共施設化したため、無駄な公共施設を中に配置せざるを得なかったばかりか、投資分を回収できないままでいるのです。現在はがら空きとなったスペースの活用策を模索している段階です。これが買い取りリスクの苦い教訓なのです。呉市が福山市の二の舞にならないよう願っています。
 また、公募がかなり遅れて開発業者が決まったとしても、それに至るまでに国交省による駅前交通ターミナルの詳細設計と着工が先行しますと、本来解体費8億5千万円を控除した上で5億5千万円で建物底地を開発業者に売却するのが間に合わなくなります。そうなりますと、呉市が税金で先に解体せねばならず、売却費は14億円に跳ね上がりますので、応募者に不利になることもあり得ます。それで買い手がつかなければ泣きっ面に蜂となってしう危険性も秘めています。

 一方、呉市は平成30年7月に豪雨災害に見舞われました。結果論ですが、小村市長の分離型のそごう再開発を踏襲し、新原市長が当選した平成29年11月から、すぐに開発組合主導で動きをするべきだったと考えます。1者の権利移転ができなかったとしても、その権利を除いた上で、公募する手法もあったと思います。その残る1者の権利をそごうが購入し3者集約を完結したのは、令和元年12月でした。小村市長が構想を発表してから2年3ヶ月も宙に浮いていたのです。この長期の空白期間が、その後の新型コロナと当時の日新製鋼(株)撤退に遭遇してしまい、状況が一変しました。新原市長が自身のマニフェストに固執したことが、そごう跡地の再活用が暗礁に乗り上げたと言えましょう。
 また、3者の権利集約完結を待ってから公募するというのなら、駅前広場をそごう底地に拡張せず、そごう再開発と駅前広場の分離方式にすべく、計画を修正するべきだったでしょう。呉市の景気動向を考えると、駅前広場を拡張する意味は希薄と言えるからです。

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