Facebook 2021.3.13
呉市は、去る3月5日の呉市議会産業建設委員会で、「国道31号等呉駅交通ターミナル整備事業計画案」を公表しました。
これは呉駅前広場を隣接する国道31号に取り込み、そごう呉店跡地の東側部分の1~2階を国土交通省直轄で再整備する事業で、呉市負担はないと言います。有識者、交通事業者関係行政機関等で構成された検討会が昨年9月8日に設置され、3回の議論を経て去る2月15日に策定したものです。
計画のポイント第一は、呉駅前広場をそごう跡地東側部分にまで拡張することです。跡地に民間活用で建て替える複合施設の2階部分に待合室を設置し、そこからバスへの乗降を可能にします。この拡張部分は、複合施設部分の地上権を国が購入するか、賃借するかで国負担になるとの答弁を私が引き出しました。
そして、現況の駅前広場は呉市とJR西日本の所有地ですが、これを国道と直角に東西に分け、そごう跡地と合わせた部分をバスやタクシー乗り入れの公共交通用に、東側部分で阪急ホテルに接続する部分を一般車両の送迎乗り入れエリアとします。これらは全て国道31号の一画に位置付けられるものの、底地は呉市とJRが無償貸付けを行うということでした。
当然、現在の広場内にある一般車両駐車場はなくなります。交通ターミナルスペースが広がるため、一見市民にとってはありがたいと思われるでしょうが、そごう跡地の複合ビルにおいて、民間での賑わい創出の活用スペースが減ることが難点です。駅前広場駐車場がなくなるのですから、呉市の人口減に歯止めがかからない状況において、広場スペースを拡張する費用対効果があるのか、大いに疑問です。
第二は、駅前広場の2階部分に建設するデッキです。これは駅北口を出て、現状の国道31号をまたぐ広いものです。その上には車両レーンも布設して、多目的モビリティ、いわゆる小型バス、超小型モビリティたる自動運転EV車、そしてパーソナルモビリティたる電動キックボードを走行させる、正に夢のようなイメージ図が描かれています。
このデッキは国が建設するも、エレベーターの保守管理や維持費は国が全額負担するのか、呉市に負担があるのか、全く決まっておりません。
デッキの有用性にしても、駅を出てから民間ビルへ直結するのはそごうを建て替えた複合ビルのみであって、阪急ホテルに連結する訳ではありませんので、甚だ非効率な訳です。
しかも、これまでデッキに店舗を誘致するとしていましたが、さすがにどの事業者も応募しない可能性があるため、失敗と評価されるの避けて、今回は外しました。
第三は、これら駅前だけでは終わらないことです。デッキを車両が通行するという意味は、JRをまたいで反対側の駅南に新たにデッキを建設し、そこと連結することが大暫定になっています。この場合駅南にはレクレビルがありますので、少なくともこの一画を解体し、そこに南側デッキを建設することになります。
因みにレクレビルが立つ呉駅南3街区は呉市が所有し、20年間の事業業定期借地をオリックスと契約しており、その期限は令和7年10月22日となっています。つまり期限が来れば更地返還となっているのです。
しかも、線路をまたいでこれら南北デッキを繋ぐには、現在の駅舎を橋上駅として建て替える必要があります。つまり橋上部分を改札口を出た人が南北出口に向かい、且つ車両が通行することになる訳です。
駅前交通ターミナルは国直轄事業で呉市負担はないとしつつ、実は大きな財政負担を余儀なくされることになります。即ち、さすがに南側デッキ建設は呉市の全額負担になりますし、橋上駅の建設は、過去の歴史から全額呉市が負担して建設し、JRに寄附する可能性があるのです。広島駅場合は、集客力が大きいのでJRも負担し、その上で国土交通省も補助する訳ですが、呉駅舎建て替えは、呉市の政策的理由で行うものですので、JRが負担するとは未だ表明していません。
第四は、交通ターミナルを交通拠点として位置付け、市街地を自動運転バスを走らせると言いますが、道路交通法の規制もあって、通行可能になるのは大都市からです。加えて民間事業者が高額バスを走らせても必ず赤字が出ますので、それは未来永劫呉市が補助金支出することになるのは目に見えています。これでは呉市交通局での赤字どころか、それを上回る公金支出になりかねません。
そもそも国交省が乗り出したのは、同省が打ち出している新宿駅交通ターミナルである新宿バスタを起点とし全国地方都市と広域間バスで連絡する構想に、呉市長が議会の相談もなく勝手に手を挙げたことに端を発します。
広域間バスは、過去に呉~大阪ユニバーサルジャパンを連絡する広域間バスを中国ジェイアールバスが2路線走らせたものの廃止に追い込まれた苦い経緯があります。ですから、呉~新宿間を走行させれば必ず赤字で出ると予想しており、「これを呉市が補填するのか?」と以前質問したことがあります。その時当局は、赤字補填は考えていないと答えました。ということは、バスタ計画そのものが空を切ることになります。案の定この度発表された計画案からは、完全に広域間バス拠点としての位置付けが消えてしまったのです。
第五として、そごう跡地に建設予定の複合ビルへの公共施設施設入居です。これにはこれまでのアーバンデザインセンターに加え、新たにすこやか子育てセンターが入ると初めて掲載されました。基本計画には登場していなかったものです。これは、現在レクレビルに入居していることで、レクレビル解体の可能性があることを見越した窮余の策と推察しています。
実際現在のすこやか子育てセンターにおいて呉市は、家賃1,320万円に共益費330万円を加えた年間1,650万円を血税から負担しているのです。
新庁舎が平成28年3月から供用開始となりましたが、それに合わせてビューポートくれの2階にあった国際交流広場が、新庁舎1階に国際交流センターとして移転して以降、5年間空き部屋になっています。従いまして、既存の公共施設に移転するべきです。
だいたい、昨年4月に策定された基本計画そのものに、予想事業費やその内の呉市負担分が一切明示されていません。これでは費用対効果を推し量ることもできないのです。
しかもこの度の整備事業計画案のスケジュールの横軸には、年度が記載されていないのです。このような事業計画は見たことがありません。これは委員会で私が指摘しました。当局によりますと、国交省が予算上の問題で時期を明示することを拒んだといいます。
しかしこれは表面上の理由で、昨年できなかったそごう呉店跡地の売却公募を今年秋に実施することにしていますが、コロナ収束が未だ見通せないことから企業マインドを引き出すことが困難だとみているのが本音でしょう。
以上の理由から、呉駅交通ターミナル計画は、呉市や市民にとって将来確実に重くのしかかって来るに違いありません。