Facebook 2021.4.7
呉市では民生・児童委員の後継者不足に悩まされています。そこで4年前から民生委員の75才年齢制限を解き、自身の住まいが担当地区内でなくとも、許容する方針に転じました。
このなり手不足の要因は、戦後教育を受けた世代の公的精神が希薄であることや、地域のコミュニティが崩壊しつつあることが根本要因です。これは自治会長や自治会役員のなり手不足にも通じます。戦後のGHQによる武士道精神の徹底排除から大きな影響を受けたことが考えられます。
ただ現実論に目を落としますと、報償金が直接民生委員個人に支払われていないことが直接の要因と睨んでいます。民生委員は民生委員法によって、ボランティア活動と位置付けられていて、報酬はない代わりに報奨金が支払われることになっており、これは非課税扱いです。
民生委員一人当たりに支払われる報償金は年額89,700円。要援護高齢者等見守り支援事業委託費を合わせますと、109,500万円になります。
呉市としては、これらを市内28区に分れている各区民生委員児童委員協議会(民事協)に一括して振り込み、各区毎に年度会計処理を行っています。ある区の民事協では、年度末に余剰金が出た場合に配当金のような形で1~2万円程度支払われると聞きました。
この利点は、
- 呉市にとって民生委員個人個人に振り込む事務量が圧縮できる
- 民事協にとってプールしたお金を自由に使うことができる
2点です。
特に②では、地元の社会福祉団体から寄附を要請され、それに応じる場合や、県主催の研修会で広島市等へ派遣する場合の旅費を支給できることが挙げられます。研修会参加者は、民児協毎に動員人数が割り当てられますので、選出して派遣する場合、先に全額報奨金を渡していれば、旅費や会費の負担を個々に強いることになり、結果、民生委員を派遣することが甚だ困難となるためです。
そもそも、諸団体から民児協に対して寄附を依頼する慣習が問題です。これらの報奨金はあくまで公費から支出されており、各民生委員への活動費に充当される意味がありますので、そこから寄附金に充当することは避けねばなりません。逆に民児協がお金を持っていることで寄附を依頼されるという、鶏が先か卵が先かに似た構造に陥っていると言えましょう。
これまで私の質問に対し呉市は、「用途は民児協に任せているのでタッチしない」とか、「民事協にまとめて振り込むのは民児協からの要望」と答弁して来ました。
しかし、これは詭弁です。報償金は民生委員個人に支払うものですから、その配分の有無を民事協任せにするのは、趣旨から逸脱している訳です。民事協を運営する執行部的民生委員であれば確かに都合がよいですが、末端の民生委員にこのことを聴きますと、「直接支払ってもらった方がよいに決まっているが、とても声を上げられる雰囲気にない」と、複数の委員から本音を聴かされました。新人となれば、そのように個人に対し報奨金が支払われることそのものについて知らされていませんでした。
一方、呉市は新型コロナ対策として、昨年5月臨時会と12月定例会で、民生委員に対する報償金を月額千円追加する補正予算を上程しました。5月の予算委員会で私が、民生委員の手許に確実に届くようにしなければ意味がないことを指摘。それを受け、自治会長が交通費を支弁されるのと同様、各民生委員から受領印をもらうことで、その証明とした経緯があります。
令和3年度予算7,600万円の中にも、同様の月額千円、合計759万円が含まれており、受領印による直接手渡し方式を継続するとのことです。
丁度この手法に慣れて来たことで、この機会に、本来の報奨金もそのようにすべきです。そうすれば、私の指摘により、消防団員に令和元年度から直接報酬を振り込むようにしたのとは違い、市の事務作業量は増えません。
後は、民児協としてのプール金がなくなると困る問題をどうするかです。私は、報償金とは別に、委託費として民事協に振り込まれている要援護高齢者見守り支援事業と民生委員協力員研修委託費をプール金に使うなど、二重構造にするべきと、先の予算委員会で代案を提唱しました。
しかも、この二つの委託費は、市民児協にとって請負業となり、法人税対象となります。この点は、以前から私が指摘して来ましたが、抜本対策が講じられないまま今日に至っています。従いまして、これを委託費ではなく、10/10の補助金に変えることを提案しました。補助金であれば収益事業に該当しないからです。
これらのことにより、民生委員のなり手が充足してくれば、以前議会の民生委員会が提唱して創設した民生協力員制度は廃止できると思われます。
何故なら、民生委員に報償金が直接支払われることとなりますと、完全無報酬である民生委員予備軍たる民生委員協力員へのなり手が逆に少なくなると推察されるためです。そもそもこの制度は民生委員のなり手不足を解消するために生まれた制度です。協力員が補佐することで民生委員の負担を和らげると同時に、将来スムーズに民生委員に昇格できることを意図したものです。
しかし実際民生委員からは、逆に彼らを教育することや、訪問先等役割を分けることで、余計な仕事が増えるという不満の声も聞こえて参ります。
よって、新型コロナによる報償金追加をよき機会に、報償金の個人への支払いと合わせ、課税対象から逃れる補助制度に改革変更することが先決と訴えているところです。