「すずさんに逢える丘」は澤原邸三ツ蔵、東泉場とセットで
Facebook 2019.11.18
呉市は本年度予算に、大ヒットしたアニメ映画「この世界の片隅に」の主人公である「すず」が嫁いだ呉市上長ノ木町の北条家跡地の整備事業を計上しました。仮称「ずずさんに逢える丘」です。昨年度予算化していましたが、西日本豪雨災害を受け予算執行できなかったことで、仕切り直した格好です。
映画で上長ノ木町とあるのは、実際当時あった地名で、現在は住居表示整理により畝原町になっています。ここは当時河野夫婦が住んでおり、その孫である作者・こうの史代が少女時代に広島市から時々祖父母に会いに来ておられた場所で、ここが北条家のモデルになったことは間違いありません。またすずが嫁ぐ前は広島市中区江波が描かれていますが、こうの史代の実際の出生地の西区のようです。ということはすずは史代自身がモデルと言えましょう。
この度整備を予定している史代の祖母が実際住んでいた土地は、既に更地になっており、20年程前から空き家になっていて、数年前解体したそうです。ここを呉市が史代から寄付を受けたもので、インターロッキング舗装をし、すず像を建立、家の間取り図を掲示するそうです。
予算額は設計・整備に1,250万円です。今年度末に完成の予定となっています。
但し、ここを整備しても駐車場もなく、散策するしかありませんので、この際、散策コースを設定すべきでしょう。幸い畝原町にはお寺の駐車場もあるので、ここも交渉次第で利用ができれば御の字です。
そこで私は、散策コースとして、この丘と澤原邸の三ツ蔵をマップにルートを記載し、この三ツ蔵のすぐ近くにあるスーパーマーケットの駐車場を交渉した上で利用させて頂くことを当局に提案しました。
この三ツ蔵はアニメでも有名なスポットで、すずさんが商店街に向かう際、必ず通った所です。因みに澤原邸は国の重要文化財ですから、アポを市が受け付け、この駐車場を起点に、すずさんに逢える丘と三つ蔵をボランティアが案内するのです。但し、観光客自ら訪ねてすずさんに逢いに行く場合は、道中に標識を立てる必要があろうかと思います。
この起点から更に買い物に行った先、即ち東泉場(とうせんば)を案内するのが第2段です。当時かなり賑わっていた商店街で、この場面もアニメに登場します。しかし戦中の空襲で焼け野原になり、区画整理が行われ、当時の面影はありません。ただ、その中心は先般廃業となった三和ストアで当時の場所とは若干換地により異なっていますが、当時は「宇都宮八百屋」と呼んでいました。
実際、昭和14年当時の地図が呉市図書館に寄贈されており、東泉場の全ての商店名が記載されています。移転はしたものの、現在営業を続けている店も何店かあります。私はこの際この「東泉場」をクローズアップすべきと考えます。これを当時の地図と現在の地図を見比べるようにパンフレットに記載し、ルートも書き込むのです。ここは拙宅のすぐ近くであり、空き地を借りられますので駐車場としての活用が可能です。
因みに、すずが買い物からの帰りに道に迷い遊郭街に行きます。ここは朝日町で、当時の唯一残っていた洋館が医師会病院前にありましたが、先日解体されたのは残念でなりません。
幸い今年度予算にパンフレット作成費として46万円組まれていますので、これらを掲載すると同時に解説を付けるといいでしょう。
他にもアニメに登場する本通、中通、めがね橋、青山クラブ、海軍病院(現国立呉医療センター)も、すずが夫の周作とデートしたコースとして、記載すればよいかと思います。下士官兵集会所「青山クラブ」の番兵塔が出て来ますが、その現物は、国の重要文化財である入船山記念館の門をくぐって入り口付近にあります。
一方、この度の整備構想は予算計上される前に、議会に対して事前説明は一切ありませんでした。その土地のことを私が聴きますと、こうの史代氏から寄付を受けたとの答弁は初めて返って来る始末です。
それではそもそも寄付を受けるべきだったのか、疑問が残る訳です。前市長のトップダウンで決まったものと推察されますが、十分な検討が必要だったと思われます。
と申しますのも、地元自治会には一切説明がなされていなかったからです。穏やかな生活の場に、観光客や市民のウォーキンググループが足を踏み入れることになるのですから、先ずは地元説明会を開き、おもてなしの心でこれらを受け入れることの総意を得られた上で、初めて寄付を受けるべきだったでしょう。一旦寄付を受けてからでは、税金を投じて整備せざるを得なくなるからです。
地元の空気としては、やはり説明が全くなかったことで、一部よく思っておられない雰囲気は漂っていました。先ずは地元自治会が受け入れてこそ、初めてこの整備事業が生きる訳です。呉市の進め方は大いに反省してもらわねばならないでしょう。私は当局に対し、遅ればせながらでも地元説明会を開催するよう申し入れたところです。